難民に対する「選択的思いやり」、ウクライナ戦争が見せつけた欧州の現実
アラブ首長国連邦アブダビ(CNN) ロシアのウクライナ侵攻を受け、西側諸国は前例のない協調と連帯の姿勢を示した。政府も企業も個人も一丸となって対ロシア制裁やボイコット運動を行い、欧州は大量の難民の流入に門戸を開いた。
だが欧州のウクライナ難民に対する姿勢は、中東からの難民に対する姿勢との違いを際立たせている。
ウクライナの難民危機は深刻な状況にある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシア軍の侵攻が始まって以来、300万人以上がウクライナから避難した。これと比較すると、シリア内戦が始まってから2年近くたった2013年、100万人がシリアを脱出するまでには半年を要した。
この2つの戦争は、違う時期に、異なる大陸で発生した。だが紛争を逃れたシリア人と異なり、ウクライナ人は欧州ではるかに温かい出迎えを受けている。
米シンクタンク、カーネギー国際平和基金のH・A・ヘリヤー氏は言う。「彼らは欧州政府によって比較的簡単に受け入れられている。ロシア侵攻に対する窮状が圧倒的な連帯感につながっている」
マーティン・グリフィス国連事務次長(人道問題担当)はCNNの取材に対し、難民受け入れの優先順位には「ショッキングな違い」があると述べる一方、近隣国が大量の難民を受け入れるのは異例ではないと付け加え、トルコのシリア難民やパキスタンのアフガニスタン難民を例に挙げた。
デンマークは欧州の中でも特に厳格な反移民政策で知られる。政府はウクライナ難民を歓迎し、全ての難民を平等に扱うと言いながら、一方で一部のシリア難民に対しては、今も衝突が続くシリアに帰国するよう促している。