(CNN) キエフ国際空港に最初の弾道ミサイルが撃ち込まれてから1カ月あまり、ロシア軍の動きはウクライナの執拗(しつよう)な抵抗によって混乱と崩壊に瀕(ひん)している。この数日では、複数の前線で活発化したウクライナの反撃にも遭っている。
ロシア軍は数の上ではかなり優位だが、圧倒的とは言えない。ロシアの装甲部隊は西側諸国が供与した対戦車兵器やトルコ製のドローンに苦戦している。ウクライナの防空部隊は予想以上の能力を発揮し、さらに数千発のアメリカ製ミサイル「スティンガー」で防備を固めている。
不十分な後方支援、疑問の残る戦術、次第に明らかになるロシア大隊戦術グループの士気の低下。こうした状況により、ウクライナ軍は複数の地域でロシアの進軍を抑え、反撃に転じている。
CNNが衛星画像やSNSコンテンツ、両国の公式声明などを分析した結果、戦争は新たな局面に移行しつつあることがうかがえる。それは消耗戦だ。ロシア軍の長く伸びた戦列にウクライナが切り込む中、ロシアは支配地域を広げるどころか失い始め、物資補給に大きな問題を抱えることになるかもしれない。
ロシアはその埋め合わせとして、大砲や複数のロケット発射システムからミサイル攻撃や間接射撃を多用していると思われる。キエフ北部や西部では、ロシア軍は進軍を試みずに防御に徹し、ウクライナ部隊の勢力が手薄なイルピンやマカリウなどの地域を砲撃しているとみられる。
この2週間、ウクライナ西部のリビウから中部のジトーミル、南部のミコライウに至るまで、燃料貯蔵所や軍補給所、軍用飛行場を中心にロシア軍のミサイル攻撃が激化している。
ロシアの誘導ミサイルが燃料貯蔵施設に当たり、火災を消す消防士ら=27日、リビウ/State Service of Ukraine for Emergency
攻勢に転じたウクライナ
これまでウクライナ軍は攻勢に出ることにおおむね慎重な姿勢を見せていたが、国家安全保障防衛会議のダニロフ書記は25日、「我々は一部地域で反撃に転じている。こうした反撃は間違いなく生産的だ」と述べた。
こうした反撃は限定的かつ局地的ではあるが、ウクライナ南部や中部、北東部の前線で展開されている。
米シンクタンクの戦争研究所は最新の評価報告で、これらを「慎重かつ効果的に行われており、ウクライナ軍は能力の範囲内で、戦術的または作戦的に重要な地域の小規模なエリアを奪還している」と分析している。