(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領はCNNとの独占インタビューで、ロシアとの戦争を終わらせるために東部の領土を譲り渡すつもりはないと言明し、ウクライナ軍は東部ドンバス地方での戦闘に備えていると強調した。
ゼレンスキー氏は15日、首都キーウ(キエフ)の大統領府でCNNのインタビューに応じた。この中で、ロシアはドンバス地方を手に入れた場合、再びキーウ制圧を図る可能性もあると指摘。同地方でロシアを阻止する必要があるのはそのためだと述べ、「この戦いは戦争全体の行方に影響を及ぼし得る」との認識を示した。
「私はロシア軍とロシアの指導者を信用していない」「だから我々は理解しておく必要がある。我々がロシア軍を撃退し、かれらがキーウから、北部から、チェルニヒウやその方面から逃げ出したからといって、ドンバスを掌握した場合、さらにキーウを狙ってこないとはいえない事実を」
ゼレンスキー氏は、ウクライナがこの紛争に勝つかという質問に「もちろん勝利する」と答えた。
一方で、プーチン・ロシア大統領が戦術核兵器を使用する可能性に言及し、ウクライナ語と英語の両方で国内の惨状を訴えた。さらに、ロシア軍による東部、南部への攻撃に備え、軍の装備を一刻も早く増強する必要があると力説した。
バイデン米大統領が先週、ロシア軍の民間人殺害を「ジェノサイド(集団殺害)」だと非難した発言については、「私も同じ意見だ」と語り、キーウ近郊ブチャの例を挙げた。
「ブチャで起きたことを見てほしい。これが戦争ですらなく、ジェノサイドであることは明らかだ。兵士でなく一般市民が路上で撃たれて殺された。自転車やバスに乗っていた人、ただ道を歩いていた人たちだ」
マクロン仏大統領はバイデン氏の発言に抵抗を示し、表現を強めることは建設的でないとの考えを示した。これに対してゼレンスキー氏は、マクロン氏との会談で「ジェノサイド以外の何ものでもないことを分かってほしい」「機会があれば来訪してほしい」と伝えたことを明かした。
バイデン氏がウクライナ訪問の意向を示唆したことについても「きっと来るだろう」「もちろん本人の決めることで、治安状況にもよるが、米国のリーダーなのだから見に来るべきだ」との考えを示した。
また、世界の政治家らがウクライナ支援を口にしながら行動に移していないとのいらだちを改めてあらわにし、英語で「我々は言葉を信じない。隣人を信じない」と発言。さらにウクライナ語で「信じられるのは自分たち、自国民、自国の軍だけだ」と語り、言葉だけでなく行動で支援してくれる国への信頼も口にした。
バイデン米政権が先週表明した追加軍事支援には感謝の意を示す一方で、最も重要なのは武器を素早く軍に届けることだと強調。ウクライナが求める武器を兵士たちは使いこなせるのかという懸念が指摘されていることに対しては、「どんな装備でも使う用意がある。ただし調達は極めて急を要する。我々に使い方を習得する能力はある」と強調した。
戦争終結に向けた外交交渉については意欲を示しつつも、国民に対するロシア軍の攻撃で交渉が困難になっていると指摘。多大な人的犠牲が出ている中で「ロシアから最後通告を受けるような状況下だけで交渉するのか。そうなれば対話が『いい』か『悪い』かの問題ではなく、我々に対する姿勢が問題となり、不可能となる」と述べた。
自身がどのような人物として後世に名を残したいかという質問には「人生を精いっぱい愛し、家族を愛し、母国を愛した人間として」と答え、「断じて英雄としてではない。ありのままの私を、普通の人間として見てもらいたい」と述べた。