ウクライナに供与した大量の兵器の行方、米国も把握しきれず
ワシントン(CNN) 米国はウクライナに大量の武器を供与しているが、国境を越えて送り込んだ対戦車ミサイルや地対空ミサイルなどの兵器がどうなったかを確認する方法はほとんどないと、関係者がCNNに証言した。
バイデン政権はそのリスクを認識した上で、武器を供与している。
短期的な観点から米国は、ロシア軍の侵攻に対してウクライナが持ちこたえるためには大量の兵器の供与が不可欠とみている。米国防幹部は19日、「紛争中の友好国に対する最近の供与としては最大」の規模になると語った。だが長期的なリスクとして、そうした兵器の一部が米国の意図していなかった相手の軍や武装組織の手に渡る可能性があると、米当局者も軍事アナリストも指摘している。
「短期的な保証はある。だが戦争という霧の中に入ればほぼゼロになる」。米国が入手した情報について説明を受けた関係者はそう語る。「短い期間が過ぎれば大きなブラックホールの中に落ち、ほとんど感知できなくなる」
国防当局者によれば、バイデン政権は数十億ドル規模の武器や装備をウクライナに供与すると決断する過程で、その一部がいずれ想定外の相手に渡るリスクについても考慮していた。
しかし今、米政権は、ウクライナに対して適切な武器の供与ができないことのリスクが増大したとみている。
現地に米軍がいないことから、米国や北大西洋条約機構(NATO)はウクライナ政府が提供する情報に大きく依存する情況にある。ウクライナには、自分たちへの援助を増やし、武器の供与を増やし、外交支援を増やす根拠となる情報しか提供しない動機があることは、米当局者も認識している。
「これは戦争だ。彼らが公にする行動や発言は全て、自分たちが戦争に勝つことを目的としている。公式発言は全て情報作戦であり、全てのインタビューも、ゼレンスキー(ウクライナ大統領)の放送出演も全て情報作戦だ」。西側の情報に詳しい別の関係者はそう語り、「彼らがそうすることが間違っているという意味ではない」と言い添えた。
何カ月も前から米国や西側諸国は、ウクライナに侵攻したロシア軍の状況について、ロシア軍による死傷者数、残された戦闘能力、手持ちの兵器、使用している武器弾薬の種類や場所など、西側諸国が把握したとする情報を詳細に公表してきた。
一方、ウクライナ軍に関しては、米国を含めた西側諸国に情報のギャップがあることを当局者も認めている。
情報活動に詳しい関係者は「現場に誰もいない状況で把握することは難しい」と証言する。
バイデン政権やNATO加盟国は、ウクライナ軍から必要といわれた内容に基づき武器を供与していると説明する。この1週間では対戦車ミサイル「ジャベリン」や対空ミサイル「スティンガー」のような携行型の兵器や、スロバキアの地対空ミサイル「S300」を送り込んだ。
携行型のジャベリンやスティンガーは、列車で輸送されるS300のような大型ミサイルに比べて追跡が難しい。ジャベリンにはシリアル番号が付いているものの、関係者によれば、輸送状況や使用状況をリアルタイムで把握する手段はほとんどない。
先週には米国が「Mi17」ヘリコプター11機、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲18基など、攻撃力の高い装備をウクライナに供与することで合意した。こうした装備について米政権内部ではわずか数週間前まで、衝突をエスカレートさせるリスクが大きすぎるという見方もあった。1回限りの利用を想定したドローン「スイッチブレード」もさらに300機供与する予定だが、これも追跡は困難とみられる。