中国で教科書のイラストが物議、「醜い」「親米主義」の批判に教育当局が介入
出版元は、中国の教科書出版最大手で政府系の「人民教育出版社」。ネット上では、同社の教科書に「低水準」のイラストが掲載されたことや、その教科書が2013年から全国で使われてきたにもかかわらず、問題が指摘されていなかったことに憤慨する意見が多い。この教科書がそもそも当局の厳しい検定をどうしてすり抜けたのかと問い掛ける書き込みもある。
愛国主義のインフルエンサーたちは、イラストレーターらが米国などの外国勢力とひそかに結託し、罪のない子どもたちの心を汚そうとしていると、根拠のない主張を展開する。あるイラストレーターは米中央情報局(CIA)のスパイと呼ばれ、出身大学も「反逆者の温床」と非難された。
人民教育出版社は26日、問題の教科書を回収してイラストを差し替えると表明したが、騒ぎは収まらなかった。
28日には教育当局が同社に改善を指示し、改訂版を秋の新学期までに用意するよう求めた。さらに、全国の教科書が「正しい価値観」に従い、中国文化や国民の美的感覚に合っていることを確認するために「徹底的な審査」を指示した。
この背景には思想的な要素もある。習近平(シーチンピン)国家主席は、若者を欧米の価値観から守るためとして統制を強化してきた。現在すべての公立小中学校で、外国の教科書や文学作品などの教材を使うことは禁止されている。
一方で中国の子育て世代からは、当局の過剰な検閲によって、子どもたちが自由で多様な視点を得られずに育つことを懸念する声も上がっている。