雑踏警備は不在、「押し潰されて息できず」 155人死亡のソウル転倒事故
政府の対応に対する疑問も浮上し、雑踏警備が行われていなかったらしいことも明らかになっている。
雑踏に巻き込まれたフランス人交換留学生(22)はCNNの取材に対し、「ある時から空気がなくなった。ほかの人たちに押し潰されて、全然息ができなくなり、気を失った」と振り返った。
警官の姿がほとんど、あるいはまったく見えなかったという証言も相次いでいる。
行政安全省は30日の時点で、梨泰院の雑踏は異常な大きさには見えなかったことから、「通常」の態勢のみで警備に当たったと説明した。一方、ソウル市内の別の地域では抗議運動が予想されたことから相当数の警官を配備していたという。
しかし当局は31日になって、29日の夜、梨泰院には警官約137人を配備していたと述べ、コロナ禍前の約30~70人よりも増やしていたと強調した。一方で、警察庁凶悪犯罪捜査部門トップは「主催者がなく、大勢の人が集まるこうした状況に備えたマニュアルは現時点で存在しない」と明言。警官が配備されたのは雑踏警備のためではなく、防犯や違法行為防止のためだったことを認めた。
犠牲者のほとんどは、コロナ規制が解除されて初のハロウィーンを楽しもうと梨泰院に出かけた若者だった。
行政安全省の31日の発表によると、死者155人のうち10代が12人、20代が103人を占め、男性は55人、女性は99人だった。
このうち外国人は26人で、米国、中国、イラン、タイ、スリランカ、日本、オーストラリア、ノルウェー、フランス、ロシア、オーストリア、ベトナム、カザフスタン、ウズベキスタンから来ていた。
負傷者は149人に上り、重傷者は33人、外国人は15人だった。