ANALYSIS

少子化対策に巨額を投じる韓国政府、それでも子育て支援にはまだ足りず

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少子化問題に対する尹錫悦大統領の政策の効果には懐疑的な見方も出ている/Chung Sung-Jun/Getty Images

少子化問題に対する尹錫悦大統領の政策の効果には懐疑的な見方も出ている/Chung Sung-Jun/Getty Images

最近行われたベビー用品フェアでベビーカーを物色していたキム・ミンジョンさんは、今月2人目の子どもが生まれる予定だ。キムさんはさらなる財政支援を約束する政府を鼻であしらった。「名称を変えて、いくつかの手当を統合したけれど、私たちのような親にはもはや何のメリットもない」

キムさん夫妻には民間の託児所を利用する金銭的余裕がないため、第1子の出産以来キムさんも働けずにいる。それが目下の問題だそうだ。

政府が出資する保育園は無料で利用できるが、保育士が乳児に手を上げるという不祥事がここ数年で何度かあり、多くの保護者が敬遠している。こうした事例は数えるほどだが、大々的に報道された。監視カメラの映像はなんとも胸がつまる。

「道徳的に厳格な態度」

親予備軍の前には、他にも数々の問題が立ちふさがる。それらは本質的に、経済的というよりも社会的な問題で、どんなに潤沢な予算が割かれようともしぶとく残るだろう。

そうした問題には、子育ての暗黙のルールと呼ばれるようなものもある。

韓国では、結婚した夫婦は子どもを授かることが大いに期待される。一方で、ひとり親はいまだに怪訝(けげん)な目で見られる。病院の公式データによると、対外受精治療は独身女性には適用されていない。

「シングルマザーに対しては非常に厳格な態度が今も残っている」と言うのは、社会問題について新聞にコラムを寄稿するチョ・ヒギョン教授だ。

「婚外妊娠をしたことで、何か悪いことをしたかのような言われようだ。子育てができる状況なら、必ずしも結婚している必要はないではないか?」

一方で、伝統にとらわれないカップルも差別を受けている。韓国では同性婚は認められておらず、法規制ゆえに未婚のカップルが養子縁組みを行うこともままならない。

結婚や出産を選択しない若者世代の傾向について著書を出したイ・ジンソン氏いわく、出生率増加の政策では、伝統的な男女間の結婚以外の考えを受け入れるべきだという。

「伝統的な結婚観では、異性愛や当たり前を重視する話し合いばかりのように感じる。(そのせいで)障がいや病気を持つ人々、なかなか子どもを授かれない人々が除外されている」(イ氏)

生涯独身という選択

イ氏は韓国でよく耳にするジョークを例に挙げた。「25歳を迎えた時に交際相手がいない人は、ツルに姿を変える。つまり、シングルはもはや人間ではなくなるのだ」

イ氏のような人々は、結婚や家庭といった伝統的な期待に応えようとせず、「自分の幸せばかりを大事にして、社会の責務を蔑ろにする」自己中心的な人間だと社会からみなされるという。

家父長社会で女性は子どもを持つようプレッシャーをかけられるが、そうした傾向にはなかなか進歩が見られないとイ氏は指摘する。「家父長社会で女性は結婚、出産、育児であまりにも多くの犠牲を強いられる。この10年はとくにそうだ。だから女性たちは結婚せず、充実した生活を送る可能性を探り始めている」

チョ教授も同意見だ。父親は会社に身をささげ、母親はたとえ働いていたとしても、家庭を支えるべきだという世間の期待がいまだに漂っているという。

「実際に女性のほうが男性よりも稼いでいるカップルを大勢知っているが、いざ帰宅すると、女性は家事や育児をこなさねばならず、夫の心理的サポートにも努めなければならない」

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