子どもや女性が死亡、160人が飢えの瀬戸際に 船で漂流のロヒンギャ
難民キャンプの生活も安全ではない。火災が頻繁に発生して何百棟もの住宅が焼失し、モンスーンの季節には粗末な造りの小屋が洪水で押し流される。
難民の多くは絶望感に駆られ、人身売買業者に金を払ってキャンプからの脱出をはかる。
カーンさんの親族は、娘にもっといい生活をさせたいとの思いから、危険を冒してボートに乗り、11月25日にバングラデシュを出航した。
「ロヒンギャの人たちは絶望感を強め、自分の命を危険にさらしてもいいと思うようになっている」とカーンさんは言う。
コックスバザールからマレーシアに着くまでには何週間もかかり、海上の状況は厳しい。
カーンさんによると、漂流しているボートの乗船者の多くは雨水を飲みながらしのいでおり、絶望に駆られて海水を飲む人もいるという。
17歳の兄弟がこのボートに乗っているという別の男性は、「彼が生きているのか、いないのかも分からない」と語った。乗船したのは、体が弱っている両親の医療費を助けるため、仕事を見つけたいという思いからだったという。
海上で遭難した人の救助は、国際法で全ての国に義務付けられている。だが、特にロヒンギャについては、迅速な対応が行われるとは限らない。
昨年12月、インドネシアは、ロヒンギャ難民100人以上を乗せたまま動けなくなったボートの修理に協力することで合意した。しかし乗船者を難民として受け入れることは認めなかった。
2020年3月には、約300人のロヒンギャを乗せたボートが半年間にわたって漂流。複数の国が受け入れを拒み、最終的にインドネシアが受け入れたが、その時までには女性や子どもを含む少なくとも30人が死亡していた。生き残った女性の多くは、船上で暴行されたと訴えた。
昨年、インドの最高裁は、インド国内のロヒンギャ難民をミャンマーに強制送還することを認める判決を言い渡した。
UNHCRによると、インドは国連難民条約に加盟しておらず、ロヒンギャが不法移民とみなされて強制送還の対象となることがある。
カーンさんは「どうか私たちを人として見てほしい」と国際社会に訴えている。「どうかロヒンギャを助けてほしい。そうでなければ私たちは死んでしまうかもしれない」