デモ参加者らに処刑の危機、救命訴える家族の声 イラン
（ＣＮＮ） イランの古都イスファハンにある何の変哲もない広場は今や、同国で注目を集めるサッカー選手、アミル・ナスルアザダニさんを支持する人たちによる巡礼の地と化している。２６歳のナスルアザダニさんは、既に処刑台が設置されたこの広場で死刑に処される可能性がある。本人に近い人物がＣＮＮに明らかにした。
イランではヒジャブを適切に着用していないという理由で道徳警察に逮捕された２２歳の女性が死亡したことをきっかけに、９月から全土で反政府デモに火が付いた。現在国内には、西側世界がクリスマスの祝祭に気を取られている間に逮捕者らの処刑が迫っているのではないかとの不安が広がっている。
活動家団体の１５００Ｔａｓｖｉｒと連携してＣＮＮが確認したイラン国内の文書や映像、目撃者の証言、声明によると、現在ナスルアザダニさんを含む少なくとも４３人に対して直ちに死刑が執行される恐れがある。
当局は既に抗議デモに関連してこれまで少なくとも２人の死刑を執行。このうち１人は公開の場で絞首刑に処された。
ＣＮＮと１５００Ｔａｓｖｉｒが調査した目撃者の証言や公式文書からは、極めて迅速なイラン国内の司法手続きの実態がうかがえる。死刑になる可能性のある罪状であっても、大抵は１度の開廷期間で判決が言い渡されていた。
ナスルアザダニさんは先月１６日のイスファハンでの抗議デモで、民兵組織のメンバー２人を含む３人の治安要員の殺害に関与した罪に問われた。イラン国営メディアＩＲＮＡが先週報じた。
国営メディアが市の司法責任者の話として伝えたところによると、ナスルアザダニさんの罪状は当局への反乱。イラン刑法では死刑に該当する罪状だという。
ナスルアザダニさんの逮捕を目撃した人物は、釈放されることを確信しつつも毎日冒頭の広場へと通い、処刑が行われるかどうかを確認した。ＣＮＮの取材に答えたところによると、逮捕された日の時点で当局はその週の終わりまでに釈放すると告げていたにもかかわらず、その後情報は途絶えた。数週間が過ぎ、当局はナスルアザダニさんが絞首刑になる可能性があると明かしたという。
ナスルアザダニさんとも近い関係にあるこの人物は、本人の家族について、当初逮捕の理由を把握していなかったと説明。当局もナスルアザダニさんの状態に関して、情報を共有するつもりがないと指摘した。ナスルアザダニさんに近い人々に対しては、早い釈放を望むのであればこの件について「沈黙を守る」よう警告が発せられてもいるという。
ＣＮＮはこれまでの調査で、囚人への拷問や性的暴行が行われていることを突き止めた。複数の人権団体によれば、拷問による「自白」が被告に対して使われている。裁判も名ばかりのものだという。
一方でイランの当局者らは裁判を擁護している。最近ある国会議員は、現行の騒乱に関与した人々について、逮捕後５～１０日以内に処刑しなくてはならないとの認識を示した。ＣＮＮはイランの複数の当局者にコメントを求めたが、公式な返答はない。
同じくイスファハンで３人の治安部隊の殺害に関与した罪に問われたマジド・カゼミさんは、犯罪行為に関わったとする自白を取り調べの中で強要されたと周囲に訴えていた。
カゼミさんが収容されている施設から釈放された人物が情報筋に語ったところによれば、カゼミさんは腕や脚、鼻の骨を折られていたという。この情報筋はＣＮＮに対し、カゼミさんの裁判がホリデーシーズンに重なっていると説明。イランの体制側は国際社会の目がクリスマスに向いていることを利用するだろうと予測した。
「彼らがマジドを処刑するのではないかと本当に恐れている」（情報筋）
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