核がもたらす影響
そうしたわけで、多くの韓国人の目には1つの選択しか映らなくなっている。中にはしびれを切らしだした者もいる。
韓国の核保有の方向に最近意見を変えたチオン氏も、北朝鮮に対処するには拡大抑止戦略は限界に達しており、韓国が核で武装しないかぎり戦争を回避することはできないと考えている。
「もちろん、北朝鮮は韓国の核保有を望んではいない。今なら彼らは韓国軍を無視できる」(チオン氏)
「だが北朝鮮は神経質にならざるを得ない。(韓国が核開発を決断した場合)すでに4000発以上の核兵器を製造できるだけの核物質が手元にあるのだから」
とはいえ、韓国がこうした方向に踏み出せずにいる理由は、米韓関係にひびが入る懸念だけではない。韓国が核不拡散条約(NPT)から脱退すれば、国内の原子力発電に甚大な影響が、速やかに現れるだろう。
「第一に、核供給グループは韓国に供給する核分裂物質を断つだろう。韓国は核分裂物質をすべて外部からの供給に依存している。国際社会からの制裁も招く可能性がある」とクリンジャー氏は言う。
さらに、この地域での軍事拡大競争も引き起こしそうだ。隣国中国はそうした軍事拡大を許容しないと明言している。
「おそらく中国は面白くなく、基本的に韓国の核保有を全力で阻止してくるだろう」と語るのは、韓国国民大学校で長年北朝鮮問題を研究するアンドレイ・ランコフ教授だ。
想定される影響を考えれば、韓国は米国からすでに提示されている保証で安心する方がいいのかもしれない。
「朝鮮半島にいる2万8500人の米軍兵士は、まさに仕掛け線の効果がある。南北朝鮮間で戦闘が勃発すれば、米国が巻き込まれないのは不可能だ。我々は直接的に関与している」(パンダ氏)
結局のところ、仮に韓国が核兵器を保有したとしても、問題そのものが消えてなくなることはほぼないと警鐘を鳴らす意見もある。
「核兵器のおかしな面として、自分たちに兵器があるからと言って相手の兵器を相殺することにはならない」と、ミドルベリー国際問題研究所のルイス教授は言う。
「イスラエルを見ればわかる。イスラエルは核で武装しているが、イランの核兵器保有を恐れている。つまりイスラエルの核兵器は、イランの核兵器に対して抱く脅威を根本的には払拭していない」
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本稿はCNNのポーラ・ハンコックス記者の分析記事です。