タイの大気汚染が深刻化、森林火災の煙で健康被害続出
治療を求める患者が殺到
チェンマイ大学附属病院によると、チェンマイでは1月~3月にかけ、1万2000人以上が呼吸器の問題で治療を受けた。
同病院は、ぜんそく、呼吸器感染症、結膜炎、息切れを引き起こす肺気腫といった疾患で治療を求める患者の多さに対応し切れなくなっているという。
先週は数日間にわたってタイ中部ナコンナヨック県にある2つの山で火災が猛威を振るい、森林公園にまで燃え広がった。ヘリコプターを使った消火活動などで、火災は2日、ようやく消し止められた。
チェンマイ大学附属病院は「北部の至る所で煙危機が起きている。特にチェンマイではPM2.5による大気汚染が継続的に強まり、住民の健康に影響を与えている」と指摘する。
PM2.5は直径2.5マイクロメートルに満たない微小な粒子状の大気汚染物質。硫酸塩、硝酸塩、黒色炭素などが含まれ、肺や呼吸器の奥まで入り込むことから特に害が大きいとされる。こうした物質は肺疾患や心疾患との関係が指摘され、認知機能や免疫機能障害を引き起こすこともある。
病棟は満床状態が続いているため、入院して治療を受けられない患者もいるという。
一方で、チェンマイの別の病院の医師は、大気汚染に関係する疾患の患者数は多いとしながらも、この季節としては平常とみなされていると指摘した。
「逼迫(ひっぱく)はしておらず、まだ患者の受け入れができている。だが大気汚染に関連して治療を受ける人の数は増えている」と医師は述べ、「過去3年間の統計によれば、4月末が近づくにつれ、この数は徐々に減るはずだ。引き続き注意深く状況を見守る」とした。
世界保健機関(WHO)は大気汚染を「懸念すべき公衆衛生問題」と位置付け、寿命を縮める可能性があると指摘している。
英ロンドンの研究機関が2022年に実施した調査では、大気汚染が余命に与える影響は喫煙よりも大きいことが分かった。