消えつつある西部の水源、ウォール街が狙う次の投資先に
米アリゾナ州シボラ(CNN) アリゾナとカリフォルニアの州境付近に位置するソノラ砂漠に小さな片田舎の町シボラがある。季節にもよるが、町には約300人の住民が暮らしている。
ここでの生活はほぼ完全にコロラド川頼みだ。川は木綿やアルファルファといった大量の水を必要とする作物を育て、周辺に野生動物の楽園を確保し、舟下りなどのレクリエーションで観光客を楽しませる。
おそらく大半の米国人には耳なじみのない場所だろう。だからこそ、投資会社「グリーンストーン・マネジメント・パートナーズ」がここに500エーカー(約200ヘクタール)近い土地を購入したのは意外だった。同社のウェブサイトには、「公共の利益と民間企業の双方に利益となる水取引の推進を目指す」とある。
東海岸の金融サービス複合企業「マスミューチュアル」の子会社であるグリーンストーンには批判もある。グリーンストーンは、シボラでもっとも貴重な限りある資源、すなわち水で金もうけをしようとしていると非難されている。10年にわたる大規模な干ばつのなか、アリゾナ州に割り当てられるコロラド川の水量が削減されているさなかだ。
シボラ在住でラパス郡行政官を務めるホリー・アーウィン氏は、「こうした企業は、農業を始めて地域社会の一員になるために土地を買い上げているわけではない。用水権が目当てだ」と語る。
こうした用水権を近く享受するとみられるのがアリゾナ州クイーンクリークだ。200マイル(約320キロ)ほど離れたフェニックス郊外の新興地域は、シボラのグリーンストーン所有地からコロラド川の用水権を2700万ドル(約36億円)で購入することを承認した。しかし、ラパス郡やモハベ郡、ユマ郡が用水権譲渡を認可した開拓局を相手に訴訟を起こしたため、現在は裁判となっている。
開拓局は裁判に関する質問をすべて米司法省に回した。CNNは司法省にコメントを求めたが、返答は得られなかった。
司法省は3郡の訴えに対し、開拓局の環境調査は国家環境政策法を「十分に満たしている」と主張した。用水権を移譲しても環境に甚大な影響が及ぶことは一切なく、せいぜい、半年に満たない間、コロラド川下流域の一部の水量がわずかに減るだけだと述べた。
3郡と司法省の主張を聞いた連邦地方裁判所のマイケル・リバーディ判事は4月下旬に判決を下すと明らかにした。
アーウィン氏は、グリーンストーンについて、地域社会に将来もたらされるものを犠牲にして大金を稼ごうとしていると指摘。「過酷な干ばつのなか中、地域社会はこの川の水を必要としている。州はどこかの時点で、地元住民を守り、水を守る責任がある。用水権目当てで土地を購入し、都市部に便宜を図って用水権で金もうけしようとする人々に迎合すべきではない」と述べた。