消えつつある西部の水源、ウォール街が狙う次の投資先に
ウォーター・アセット・マネジメントは、ウェスタンコロラドのグランドバレーに少なくとも3000エーカーの土地を所有している。まさにミュラー氏がコロラド州に割り当てられた水の保全活動をしている場所だ。同社は複数名義を使い分けて土地所有を隠しているため、全容を突き止めるのは難しいと言う。
「ウォーター・アセット・マネジメントはさまざまな手段で、土地購入取引が地元当局に分からないようにしている」とミュラー氏。「ニューヨークからやって来て、川の水を根こそぎにしようと灌漑農地に投資し、崩壊するのを傍観するのは、あまりほめられたものではない」
CNNは、ウォーター・アセット・マネジメント以外の名義を使って土地所有を隠しているとの疑惑についてコメントを求めたが、返答はなかった。CNNがコロラド州モハベ郡とメサ郡の査察官ウェブサイトで検索したところ、ウォーター・アセット・マネジメント名義で所有されている土地は見つからなかった。
コロラド州とアリゾナ州の会社名義では二つの郡で複数の土地が見つかった。いずれの会社も、郵便の住所はニューヨーク市にあるウォーター・アセット・マネジメントの本社住所と同じだった。
連邦政府は試験プログラムとして、干ばつ救済基金に1億2500万ドルを投じ、土地を休閑して水保全に取り組むコロラド川流域の農家や牧場主に補助金を支給した。さらに短期の休閑地を対象とした追加資金も予定されている。外部から来た投資会社が、このプログラムを悪用するのではないかという懸念の声もあがっている。
「そのうち投機ブームが起きて、外部の土地所有者は作物を生産することなく大金を得ることになるだろう」と言うのはコロラド州イーグル郡で牧場を営むケリー・ドノバン氏だ。コロラド州上院議員時代には反投機法の強化を呼びかけていた人物だ。「この手の企業は作物生産には興味がない。彼らの興味は金もうけだ。土地管理に対する心構えが全く違う」
ドノバン氏は400エーカーのコッパーバー牧場を家族で経営し、夫と2匹の犬と暮らしながらハイランド牛を飼育している。同州の農家や牧場主の例にもれず、ドノバン氏もウォール街が自分たちの未来に及ぼす影響を懸念している。
「ここは彼らの土地ではないし、彼らのルーツでもない。彼らにとっては金づるだ」とドノバン氏。「私にとっては自分事だ。家族の土地を守るために戦っているのだから。ニューヨークの人間にかき回されると大問題になりかねない」
「彼らはいつか水を売却する。そうなればその土地で農業ができなくなってしまう」とドノバン氏は続けた。「彼らは価値がもっとも高くなったタイミングで水を売るが、私たちには何の得もない」