タイの「ロスジェネ」、総選挙で変化を渇望

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支持者に手を振るタイ貢献党の首相候補、スレッタ・タビシン氏/Lauren DeCicca/Getty Images

支持者に手を振るタイ貢献党の首相候補、スレッタ・タビシン氏/Lauren DeCicca/Getty Images

タイ貢献党から非タクシン派も

タイ貢献党もまた、軍の権力からの排除や憲法改正、兵役の廃止を求めているが、不敬罪には手を付けないことを明確にする。

前出のペートンタン氏と並んで同党が首相候補に擁立したのが、政治経験を持たない不動産王、スレッタ・タビシン氏だ。タクシン派ではないことを明言する同氏は、タイの収入格差の是正や同性婚など性的少数者の権利の推進を公約の中心に掲げる。汚職を根絶し、国際社会におけるタイの地位を取り戻すともしている。

多くの政党が大衆主義的な福祉政策で有権者にアピールする中、タイ貢献党は16歳以上の国民全員に1万バーツ(約4万円)のデジタル通貨を給付すると約束した。これには財源に関する疑問が噴出しているが、スレッタ氏は5~8年の間苦境に陥っていたタイ経済を立て直すには大規模な刺激策が必要だとの見解を示す。

進歩派に立ちふさがる上院

保守派の既得権益層に真っ向から戦いを挑むタイ貢献党と前進党だが、道のりは簡単なものではないだろう。過去に保守派を敵に回そうものなら、国会議員は活動停止、政党は解散、政権は転覆の憂き目に遭ってきた。

タイでは1932年以降、10回を超えるクーデターが成功した。そのうちの2回はこの17年の間に起きたものだ。

進歩派の成功を妨げるハードルはまだある。

総選挙を経て政党から首相が選出されるには、上下両院合わせた750人の議員による首相指名選挙で過半数を獲得しなくてはならない。軍事政権が任命している上院250人は軍政派の候補に投票するとみられるため、反軍政派から首相を選出するには下院の中で軍政派の3倍近い票を獲得することが必要になる。

2014年のクーデターで暫定首相に就任した現職のプラユット首相は、19年に上記の仕組みで行われた首相指名選挙を制して新首相に選出された。同年の総選挙で下院第1党になっていたのはタイ貢献党だったが、自党の候補者を首相とすることはできなかった。

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