いざモスクワへ
先月30日にモスクワ州がドローン攻撃を受けると、ロシア政府は直ちにウクライナを非難した。だが具体的に誰が、どんなドローンを、どこから操作していたのかは謎に包まれたままだ。
ロシアの製油所に対する最近の攻撃からも、ウクライナがロシア領の奥深くに入り込めるドローンを開発していることがうかがえる。とはいえ、搭載量は限られている。
30日にロシア方面へ飛行するドローンの映像や、地上で撮影された破片と思しき写真だけでは、はっきりしたことは何とも言えない。だが特徴的な翼のデザインは、イリスキーの製油所の攻撃で使われたものと同機種のようにも見える。ウクライナの有志も、同じ機種のドローンの離陸とイリスキーでの火災と思われる画像を投稿している。
新型ドローン計画のために基金を通じて資金集めを行っているセルヒィ・プリトゥラ氏も、当時ツィッターにこう投稿した。「『復讐のために』と銘打った我々のクラウドファンディング活動を覚えているか? 最大飛行距離1000キロメートルの自爆型ドローンだ……否定も肯定もしないが、最近いくつかのロシア製油所がトラブルに見舞われた。クバーニのイリスキー製油所もそのひとつだ」
他にも旧ソ連時代の車両を改造したウクライナ製ドローンがロシア空軍基地を攻撃したが、被害は限定的だったようだ。
ウクライナ製ドローンの中でもより遠くまで飛行できるのが、最大飛行距離800キロメートルと目されるUkrjet社製の「UJ―22」だ。2月にはUJ―22とよく似たドローンが、モスクワ市から100キロメートルほど離れた場所で墜落した、あるいは撃ち落とされた。ロシア当局の報告によれば、被害は出なかったという。
墜落したドローンの画像を投稿したウクライナの政治家アントン・ゲラスチェンコ氏いわく、墜落地点は国境から500キロメートル以上離れており、「ドローンの飛行距離が延びているので、そのうちプーチン(・ロシア大統領)はびくびくしながら公の場に姿を見せることになるだろう」
UJ―22が先月末のモスクワ攻撃に関与していたかどうかは定かでないが、速度はわずか時速120キロメートル、弾頭搭載量もそこそこなので、大きな被害をもたらすことはないだろう。
ウクライナ側は攻撃実行を直接的に認めてはいないが、ウクライナ製ドローンがモスクワ市に到達できるのかと質問されたフェドロフ副首相は、こうした方面でいくつか突破口が開けたと答えた。
「長距離ドローンの生産を強化している」「今ここで計画の詳細を明かすことはできないが、増産という点に関してはある種の革命が起きつつある」(フェドロフ副首相)
ドローンコンペに参加した開発者たちも、飛行距離と搭載量をアップしたUAVの開発に取り組んでいることを認めた。
中にはすでに成功している例もある。ボロビク氏もその1人だ。
「弾頭の搭載量にもよるが、15~700キロメートルといったところだ」とボロビク氏。「(搭載量が)20キログラムなら、はるばるモスクワまで飛んでいける」