「ドローン軍団」
ウクライナ国内および海外のUAVメーカーが、早朝からキーウ郊外の空き地に姿を見せた。デジタル改革省が主催するドローンコンペに参加するためだ。
「今日の参加者はFPV(ファースト・パーソン・ビュー)ドローンの開発者だ」。ウクライナのデジタル改革相を兼任するミハイロ・フェドロフ副首相はこう言って、開発者を見渡した。
「数週間おきに様々な調査を行い、この分野の最新状況を確認して、新型ドローンの開発者を探しては成果を検証している」とフェドロフ副首相は説明した。「今回の戦争は技術戦争だ。だから我々にとって、実用化できる会社を探して新たな活用方法を検証することが非常に重要だ」
ドローンメーカーはコンペで課題を与えられ、自社製品の性能を披露しなければならない。地上の目標物を攻撃したり、固定翼型ドローンを追跡したり、時には空中戦も行う。集まっているのはゲームやテクノロジーの見本市で見かけそうなマニア志向やサブカル系の人々だ。みな若く、とても戦闘経験があるようには思えない。
だが、こと愛国主義となれば年齢は関係ない。ロシアが侵攻した当初、ウクライナには戦車も航空機もミサイルも大幅に不足していた。だがドローンは値段も手ごろで、製造も比較的しやすい――こうした特徴ゆえに、ドローンはウクライナの戦争遂行の「流れを変えた」とフェドロフ副首相は言う。
「FPVドローンは前線でますます存在感を増している。砲撃の標的を絞り込み、狙い通りに攻撃することが可能になった」と副首相は説明した。「これからは毎月数万単位でFPVが必要だ」
今回のコンペはウクライナ政府が掲げる「ドローン軍団」構想の一環だ。構想ではドローン技術に対する輸出規制の緩和や税制優遇を行い、国内産業の発展を加速して、ウクライナ軍への供給強化を図っている。コンペに参加したメーカーの多くが乗り気で、増産のためにウクライナ政府からの支援を取り付けようと、積極的に自社製品を軍用に転用している。
「弊社のドローンの性能は証明済みだ。簡単に分解できるので、5分後にはすぐ作業に入れる」と語るのは、コンペに参加したドローン操縦士のデニス・セガ氏だ。「作業の現場からすぐに立ち去って、操縦士の命を守ることも可能だ」
戦争以前は娯楽だったドローンも、今では不可欠な存在になったとセガ氏は言う。「ドローンは非常に扱いやすい。似たようなドローンの操縦経験があれば、なおさらだ」と付け加えた。「(操縦士は)直感的に操縦の仕方を理解できるだろう」
ウクライナ軍が求めているのもそうした点だが、軍用ドローンの調達を担当するユーリ・シチホリ准将はドローンで戦争の在り方が変わり、ウクライナ政府もあらゆる機種のドローンが活用できるようになったと言う。
「どの機種も仕様がまったく異なる」と、ウクライナ国家特殊通信庁のトップでもあるシチホリ准将は言う。「廉価機種と上位機種、どちらも必要だ。それから各種通信形式のドローンも。より多くの機種を確保できれば通信チャンネルも増え、活動もより効果的になるだろう」
シチホリ准将いわく、最終的な目標は大量生産だ。「すでに約30社のウクライナ企業がこうしたドローンの大量生産を始めている。年内に最大20万機の調達を目指す」と准将。「これまで2000機の購入契約を結んだが、数週間分に過ぎない。週を追うごとに調達量も増えていく」
とりわけウクライナがドローンの戦場利用だけでなく、ドローン開発計画の規模も拡大する中、数と汎用性は重要だ。