多くを困惑させる南アフリカの対ロ姿勢、答えは砂漠の鉱山か
長期にわたる関係性
南アフリカとベクセリベルク氏との関係は今に始まったものではない。アーカイブ写真にも、同氏が06年にケープタウンのビジネスフォーラムに出席し、プーチン氏が肩越しに見守る中で合意文書に署名しているようすが写っている。
ベクセリブルク氏が運営する「レノバグループ」は、インフラや鉱山事業など手広く業務を行う巨大組織だ。
米財務省は18年と22年に、ロシアのウクライナ侵攻を支援したとしてベクセリベルク氏に制裁を科した。
ウクライナへの全面侵攻の勃発後、スペイン当局と米連邦捜査局(FBI)はスペイン領マヨルカ島に停泊していた同氏所有の9000万ドル相当(約129億円)のヨット「タンゴ」を押収した。
だがキプロスの法人記録によれば、ベクセリブルク氏は西側からの制裁にもかかわらず、現在も相当数のUMK株を保有している。
CNNはベクセリブルク氏の南アフリカ政治への関与と、想定される影響力についてレノバグループに尋ねた。
「レノバが何らかの影響力を行使しているという臆測には根拠がない。ANCには何の影響力もなく、利害相反も一切ない」とレノバグループの広報担当者は声明で回答し、同グループはUMK株を間接的に保有する小口株主だと付け加えた。
非米国籍の企業が制裁を科された個人の株式保有率を50%未満に減らしたり、企業資産を信託化したりして、まんまと制裁を回避するのはよくあることだ。
ベクセリベルク氏とUMKも米国政府に反撃されることがないよう、こうした2つの対策を講じていると思われる。
「長期投資家には、民間企業の商業的利益を享受する権利がある」とUMKはCNNに声明を宛てた。「ベクセリブルク氏はUMK株を直接保有しているわけではなく、UMKの経営権や株主権を行使することはない」
こうした主張は、国内の懸念を払拭(ふっしょく)するには不十分かもしれない。南アフリカの懐疑的な人々や粘り強いメディアは、南アフリカの対ロ政策によって想定される代償を懸念している。
「投資、貿易、雇用、経済成長、通貨、西側からの孤立が危機にさらされる。多くのことが関わってくる問題だ」(グルツ氏)