対立候補はパトリシア・ブルリッチ氏とセルジオ・マッサ氏
メディアをにぎわせる物言いや予備選挙での予想外の勝利にもかかわらず、ミレイ氏の選挙戦は確実とは言い難い。アルゼンチンでは2回の投票で大統領が選出される仕組みで、連立勢力が組みやすく、過激派はつねに除外されるようにできている。
最新の世論調査によると選挙戦は3人の候補の三つどもえで、中道右派パトリシア・ブルリッチ氏と、左派で現職経済相のセルジオ・マッサ氏といった既存勢力がいて、そこにミレイ氏が頭ひとつリードしている形だ。
元治安相のブルリッチ氏はCNNスペイン語版のインタビューに応じ、ミレイ氏の暴挙とは対照的に、財務相には経済学者を抜擢(ばってき)して堅実かつ冷静に指揮を執ると述べた。
ミレイ氏の最有力ライバルと見られているマッサ氏は、現連立政権よりも現実的な左派の代弁者という立場を打ち出そうとしている。アルゼンチンで著名な政治家、クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領の支持層を疎外することなく、政治的には距離を置こうという考えだ。
選挙戦の現時点では、マッサ氏やブルリッチ氏がミレイ氏と本気でやり合うことはなさそうだ。いずれの連立勢力も同氏に政治経験がない点をさっそく批判し、アルゼンチンの既存の経済構造を変える危険性を訴えている。
とはいえ、今年では明らかに変化を求める声が上がっている。当選を果たすためには、候補者もその点をうまく利用しなければならないと専門家は言う。「今回の選挙は変化の一言につきる。セルジオ・マッサ氏ですら、政権継続の流れで変化を起こそうとしている」。アルゼンチンの有力新聞ラ・ナシオンのクローディオ・ジャケリン副編集長は先月27日、CNNスペイン語版とのインタビューでこう語った。
今月1日、候補者は第1回討論会に参加が義務付けられている。第1回投票は3週間後だ。いずれの候補者も得票率45%以上(または次点候補に10ポイント以上の差をつけて40%以上の得票率)を獲得できなかった場合、上位2人の候補者が11月の決戦投票に挑む。
数週間にわたる対立と比較の末、より熾烈(しれつ)を極める決選投票をどう戦うかがミレイ氏の最大の難関だ。ここまでのところ予想外の台頭は吉と出ているが、ブエノスアイレスの世論調査会社「Opina」のディレクター、ファクンド・ネジャムキス氏がCNNに語っているように、長い選挙戦では極端に斬新なアイデアは有権者を怖気づかせることもある。
「(ミレイ氏の)課題は、第2回投票を視野に入れた場合、大多数(の有権者)の間に広がる恐怖や不安を取り除くことだ。ミレイ氏を権力の座に就かせたくないがために、有権者が結果的に想定外の候補者に票を投じるケースもあるかもしれない」(ネジャムキス氏)
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本稿はCNNのステファノ・ポゼボン記者とイバン・ペレス・サルメンティ記者の分析記事です。