シリア、ヒズボラにロシア製ミサイルの供与同意 ワグネル介在
(CNN) イスラム組織「ハマス」とイスラエル軍との交戦で中東情勢が緊迫する中、シリアのアサド大統領がレバノンのイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」へのロシア製のミサイル防衛システムの提供で合意していたことが米国が入手した諜報(ちょうほう)で5日までにわかった。
この諜報の内容に通じる関係者2人が明らかにした。内戦状態が続くシリアでアサド政権を支援するロシアの民間軍事企業「ワグネル」がこのSA22型ミサイルの引き渡し作業を担っているという。
ただ、ヒズボラへ既に届いたのか、あるいは入手の段階にどれほど近いのかなどは不明。供与されるミサイルはロシアがシリア軍用に供与したものだという。
関係筋によると、米国は最近、このミサイルの移動などを監視。この動向に関する分析材料については、アサド大統領、ワグネルやヒズボラの間でのミサイル移送のための接触内容をめぐる諜報に一部頼ったという。
ヒズボラへのミサイル供与の可能性については米紙ウォールストリート・ジャーナルが最初に報じたが、アサド大統領の役割については触れていなかった。
ワグネルとヒズボラの戦闘員は長年、シリア内で反体制派を封じ込めるため同国軍やロシアの派遣軍と足並みをそろえた作戦に加わっている。
ヒズボラは近年、シリアからの戦闘員の撤収を開始したともされる。ヒズボラとアサド政権はいずれもイランの肩入れを受けている。西側の諜報内容に詳しい別の関係筋は、シリア内でヒズボラとワグネルとの間の協調行動が増えている証拠も握っているとした。
ヒズボラが新たなミサイル防衛システムを手にした場合、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスとイスラエル軍との軍事衝突が進む中で、イスラエルに対する新たな戦端が開かれる可能性につながるとの懸念も生じている。
ヒズボラとハマスはイスラエルへの対抗で共闘関係にあるともされる。
イスラエル軍は以前、シリア内のミサイル防衛システムを攻撃したこともある。同国内にあるイラン軍関連の場所をたたく作戦の一環だった。
ヒズボラへのミサイル供与を決めた過程でロシアの関与がどの程度だったのかは不明。ロシアは軍事蜂起に失敗したワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が今年8月に死去した後、ワグネル戦闘員を治安組織などに取り込む措置も一部進めていた。ただ、米当局の見立てでは今年9月下旬の段階で、ロシア政府がこれら戦闘員の行動を全面的に掌握したことを示す決定的な動きはなかった。