起訴も裁判もない拘禁、子どもの拘束 パレスチナ人釈放で明るみに出たイスラエル司法の実態
(CNN) パレスチナ人のファティマ・シャヒンさん(33)はイスラエルの刑務所に数カ月にわたって収監されていた。当局は当初、ヨルダン川西岸でシャヒンさんがイスラエル人を殺害しようとしたと主張したが、シャヒンさんが起訴されることはなかった。
ヨルダン川西岸の町ベツレヘム出身のシャヒンさんは、24日に釈放された。イスラエルとハマスの合意に基づき、イスラエルの人質と引き換えにこの日釈放されたパレスチナ人39人の中の1人だった。
29日までに、イスラエルは収監していたパレスチナ人180人を釈放し、ハマスは人質81人を解放した。
釈放されたパレスチナ人180人のうち128人は、シャヒンさんのように起訴されることも、裁判を受けることも、弁護する機会を与えられることもないまま収監されていた。自分が拘束された理由さえ教えられなかった人もいる。
そうしたパレスチナ人は、裁判も罪状もなしにイスラエルが無期限で人を拘束できる軍の司法制度の下で収監されていた。
イスラエルは1967年にヨルダン川西岸を制圧して以来、2つの異なる司法制度を運用している。同地のパレスチナ人住民はイスラエルの軍事法廷制度の管轄下に置かれ、裁判官と検察官はイスラエル兵が務める。一方、ユダヤ人入植者は文民法廷が管轄する。
シャヒンさんは収監されている間、弁護士との面会は許されず、家族と話すこともできなかったと訴える。シャヒンさんは逮捕された際に、人生を一変させる重傷を負っていた。
「彼らは私が人を刺したと非難した。それは事実じゃない。彼らは私に発砲した。私は脊椎(せきつい)を2発撃たれて体の一部がまひした。両脚の感覚がなく、立つこともできない」。シャヒンさんはCNNにそう語った。
イスラエル矯正局はCNNの取材に対し、取引の一環として釈放された収監者は「殺人未遂、暴行、爆発物を投げたなどの重大な犯罪で服役していた」と説明した。しかしイスラエル当局から提供された情報によって、ほとんどが起訴もされず有罪判決も受けていないことが分かった。
一時休戦の発効を前に、イスラエル司法省は人質と交換に釈放するパレスチナ人300人のリストを公表した。
リストに記載された人の大部分は、起訴もされず有罪判決も受けていなかった。
そうした人たちは「行政拘禁」の下に収監されていた。これはイスラエル当局が治安を理由に起訴することも裁判にかけることもなく無期限で人を拘束できる制度で、証拠が公表されないこともある。
イスラエルはこの制度を予防的措置としても利用しており、実際の行為ではなく、未来の行為について犯行を計画していたとイスラエル当局が主張すれば拘束することができる。
この制度に基づき拘束された人の多くは、証拠が開示されないため、理由も分からないまま拘禁されている。
「このため拘禁されている人は無力感に駆られる。何の罪に問われているのか分からず、反証する術もなく、いつ釈放されるのか分からず、起訴されることも、裁判を受けることも、判決を言い渡されることもない」。イスラエルの人権団体ベツェレムはそう解説する。
イスラエルの法律では行政拘禁は6カ月以下とされているが、この期限は何度でも更新できる。
ベツェレムがイスラエル矯正局から入手したデータによると、9月の時点で行政拘禁されていたパレスチナ人は1300人以上。約半数は6カ月を超えて拘禁されていた。