ロシアの電子戦に対抗へ、ウクライナが新たな取り組み
NATOから供与されたウクライナの装甲に割れ目
この点はウクライナにとって問題だ。ロシアの電波妨害装置は、欧米から供与されたウクライナの「スマート」兵器、つまり誘導兵器の技術的優位性を弱点に変えてしまう。
誘導ミサイルやハイマースなどの誘導多連装ロケットシステムは目標命中をGPSに頼っている性質上、無誘導兵器に比べ電子戦に脆弱(ぜいじゃく)だ。2022年以前のロシア、ウクライナ両国で広く見られた無誘導兵器はGPSに依存しない。
ポール21システムはGPS信号を妨害して、飛来するドローンやミサイルからロシアの兵器を守る仕組みで、増強されつつあるロシアの電子兵器のごく一端に過ぎない。
ジャミングやGPSの「スプーフィング」(敵のドローンやミサイルを欺き、どこか別の場所にいると思わせる技術)などもすべて、ロシアの戦術の一部だ。
国営タス通信の9月の報道によれば、ロシアのミシュスチン首相は政府の会議で、EWを含む主要装備品の生産が今年の8カ月で倍増したと伝えた。
専門家やウクライナの当局者も、ロシアが自国の部隊に電子戦を完全導入したと指摘している。
ウクライナのザルジニー総司令官は最近の文章で、ロシアは今や「塹壕(ざんごう)電子戦」を大量生産しているとの見方を示した。
さらに「ロシア軍の戦術レベルには(こうした装備品が)あふれかえっている」と説明。装備品の損失は出ているものの、ロシアは依然として「電子戦で大きな優位性」を維持していると付け加えた。
また特に米国製のエクスカリバー砲弾に言及し、「(GPSを使用した)照準システムが敵の電子戦の影響を非常に受けやすいため、能力が大幅に低下した」と指摘した。
米国防総省のデイツ報道官は、ハイマースなど米国が供与した一部のシステムで「ロシアのジャミングの影響が見られるものの、そうしたシステムを機能不全にするには至っていない」としている。