(CNN) 中国の援助で改修工事が進み、領有権争いが長引く南シナ海にも近いカンボジア南端部のリアム海軍基地に、中国海軍の艦船が初めて寄港したことが14日までにわかった。
リアム基地では米国の援助で過去に完成していた一部施設が改良工事で取り壊される事態ともなっていた。米国は同基地が中国軍による南シナ海などを含む海外での軍事進出の拡大をにらんだ役目を持ちかねないとの懸念を抱いている。
中国艦船の入港は、カンボジアのティア・セイハ国防相による公式のSNSアカウントへの投稿で判明した。同国防相は今月初旬、前任者で自らの父親でもあるティア・バン氏と共にリアム基地にこれら艦船を訪れてもいた。
添えられた写真には並んで接岸する2隻のコルベット艦の姿が映ってもいた。うち1隻の艦上でバン氏が列を作る中国海軍将校や兵士たちを閲兵する様子もとらえられていた。
投稿によると、2隻はカンボジア海軍の訓練の準備に当たっている。別の写真には、ティア父子が同基地の基盤建設を視察したり、事業の設計計画に目を通したりする場面も含まれていた。
シンガポールのシンクタンク「南洋理工大学ラジャラトナム国際学研究所」(RSIS)の研究員は、公式記録によると中国海軍艦船がリアム基地に立ち寄ったのは今回が初めてと指摘。同基地での改修工事が完工に近いことを示唆しているとし、少なくとも現段階で外国の海軍艦船を受け入れられる能力を持つまで拡張されたことを意味するとした。
改修工事が始まる前は、カンボジア海軍のより小型の巡視船の利用に適するだけの規模だったという。
横須賀カウンシル・アジア太平洋研究所のジョン・ブラッドフォード所長は、中国軍艦船が拡大工事が施されたこの基地を最初に訪れることは驚きでもないと説明。中国が資金を提供し、カンボジアは中国の密接な友好国だからだと説いた。
今回の寄港は、中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会の何衛東副主席によるカンボジア訪問とも時期が重なる。副主席は両国関係について「真の強固な友人」ともたたえていた。
副首相は滞在中、今夏に父親のフン・セン氏の後を継いで首相となったフン・マネット氏とも会談。中国国防省の公式サイトに載った声明によると、首相はカンボジア軍の近代化を強く支援してきた中国軍に謝意を表明したという。
カンボジア政府当局者は、リアム基地が中国の海軍基地として使われることを再三否定。拡張工事は、領土内に外国軍基地の存在を禁じる同国憲法に沿うものだとも主張した。中国政府当局者は、基地の工事はカンボジア海軍を強化するための「援助事業」と評し、これ以外の主張や見方は「隠された思惑」が込められた宣伝とも断じた。
一方、ロイター通信によると米国務省報道官は先に、中国艦船の立ち寄りに関する情報を注視していると牽制(けんせい)。特定の事態にはコメントしないとしながらも、リアム基地の施設利用で独占的な権利を得ようとする中国の計画に重大な危惧を抱いているともつけ加えた。
今回の寄港は、中国はタイ湾で軍事拠点の確保を求めているとする米政府当局者の長年の懸念を新たにかき立てる可能性もある。
ブラッドフォード所長は、リアム基地は南シナ海で不測の事態が起きた場合、中国軍が攻撃の戦術や補給対策を立案する上で新たな陣地になり得るとも分析。アジア大陸で基地を押さえることは、南シナ海上の島しょで人工造成した場所でのものより兵站(へいたん)面などでより頼りにできるからだとも述べた。
しかし、カンボジアでの拠点の構築は南シナ海の領土論争で自らの主張に他国を引きつける決め手にはならないとも判断。リアムから南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島までの距離は、同諸島から中国南部の海南島までの距離より遠いとの地理的要因に言及もした。