プーチン氏、米国との「合意は可能」 ロシアで拘束の米紙記者巡り
(CNN) ロシアのプーチン大統領は、同国で拘束されている米国人ジャーナリスト、エバン・ゲルシュコビッチ氏の釈放に向けて、米国との間で「合意に達するのは可能」だとの認識を示した。その際、ドイツで有罪判決を受けたロシア人の暗殺者に言及した。
米国の保守系ジャーナリスト、タッカー・カールソン氏とのインタビューで述べた。プーチン氏が西側のメディア関係者の取材に応じるのは2022年2月のウクライナへの全面侵攻以降で初めて。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の記者であるゲルシュコビッチ氏は昨年3月、ロシアでの取材中に拘束された。ロシア連邦保安局(FSB)によると、国家機密を入手しようとした容疑がかかっている。ゲルシュコビッチ氏本人やWSJ、米国政府は容疑を強く否定している。
インタビューでプーチン氏は、「この問題を解決するに当たって、我々にタブーはない。解決する用意はできているが一定の条件があり、それについて複数の諜報(ちょうほう)機関が特殊部隊の経路を通じて議論している。合意に達するのは可能だと思う」と語った。
カールソン氏がゲルシュコビッチ氏について、「明らかにスパイではない。ただの若者であり、人質に取られている」と迫ると、プーチン氏はロシア国籍のワジム・クラシコフ被告の解放に対する関心を示唆した。
ロシア国内のスパイ組織の高官だったクラシコフ被告は、2019年にベルリンの公園でチェチェン紛争の元戦闘員を殺害したとして有罪となり、終身刑を言い渡されていた。
プーチン氏はクラシコフ被告を名指ししなかったものの、「愛国的な理由から、無法者1人を欧州の首都の一つで排除した」人物だと説明した。
インタビューの最初の30分は、あたかもカールソン氏がプーチン氏からロシアとウクライナにまつわる歴史の授業を受けているかのようだった。その後は北大西洋条約機構(NATO)の拡大や、プーチン氏が呼ぶところのウクライナの「非ナチス化」などを改めて長々と語り、自身の残虐な戦争を正当化した。
米国との関係については、戦争前の20年2月以降バイデン大統領と言葉を交わしていないと明かす一方、両政府は「一定の接触」を継続していると述べた。
その上でプーチン氏は、バイデン氏がウクライナ支持に回ったことで「歴史的な規模の大変な間違い」を犯したと付け加えた。
インタビューに先駆けて、元FOXニュース司会者のカールソン氏に対しては広範な批判の声が上がっていた。インタビューによりプーチン氏に自身のプロパガンダを広める機会を与えることになるというのがその理由だ。近年カールソン氏はハンガリーで強権を握るオルバン首相や、極端な保守主義を掲げるアルゼンチンのミレイ大統領にもインタビューを行い、それぞれの政治理念を推し進める場を提供していた。