トマト缶レビューの女性を逮捕・起訴、メーカーは損害賠償請求 ナイジェリア
ナイジェリア・アブジャ(CNN) 西アフリカのナイジェリアで、トマトピューレの缶詰についてSNSで感想を募った女性がサイバー犯罪法禁止違反で逮捕・起訴された。缶詰のメーカーは、この女性の「悪意に満ちた主張」で損害を被ったとして民事訴訟を起こしている。
渦中の女性はラゴスに住む起業家のチオマ・オコリさん(39)。地元住民は、オコリさんが言論の自由を行使したために迫害されたと訴えて抗議運動を展開している。
子ども服の輸入を手がけるオコリさんは昨年9月17日、1万8000人がフォローするフェイスブックのアカウントを通じ、トマトピューレについて意見を募った。この缶詰は、オコリさんが普段使っているのとは違う地元の食品メーカー、エリスコ・フードの製品で、自身は甘すぎると感じていた。
開封した缶詰の写真を添えて意見を募ったところ、さまざまなコメントが寄せられた。その中に、「私の兄弟の製品を悪く言うな。気に入らないならSNSに持ち込まないで別のを使うか、カスタマーサービスに電話すればいい」という書き込みがあった。
オコリさんは「私を手伝って、あなたの兄弟に自分の製品で人々をki***ingするのをやめるよう忠告してください。昨日初めて使ったところ、純粋な砂糖でした」と返信した。
1週間後の9月24日、オコリさんは逮捕された。
ナイジェリア警察は、オコリさんが「エリスコ・フーズに対して人々を扇動する目的で」フェイスブックのアカウントを利用したと主張。3月7日には、捜査の結果、オコリさんに対する「有力な証拠が見つかった」と発表した。
警察によればオコリさんは、「情報が虚偽だと知りながらエリスコ・フーズに対する扇動を行った」として、サイバー犯罪禁止法24条に違反した罪に問われている。
有罪になった場合、3年以下の禁錮か700万ナイラ(約75万円)の罰金、またはその両方を言い渡される可能性がある。
これとは別に、「エリスコ・フーズに対して人々を扇動する目的で」別の2人と共謀したとして、サイバー犯罪禁止法27条違反の罪にも問われており、有罪になれば7年の禁錮を言い渡される可能性がある。
オコリさんはエリスコから民事訴訟も起こされている。同社は1月19日に声明を発表し、オコリさんのコメントのせいでサプライヤー数社から契約を打ち切られたと主張。裁判では「複数の信用枠を失う損害を被った」として50億ナイラの損害賠償を請求している。
公式謝罪要求
4番目の子どもを妊娠中のオコリさんは、ラゴス市内の教会で私服警官に逮捕され、留置された。
「(9月24日)午後6時ごろ留置場に入れられた。椅子がなかったので翌日までずっと立ちっぱなしだった。(屋根からの雨漏りのせいで)両足は水に浸かっていた。足のプレッシャーを和らげるために何度かスクワットした。家にいる子どもたちのことを考えた」。オコリさんはそう振り返る。
翌日、飛行機で首都アブジャに連行されて警察署で留置された。保釈されたのはその翌日だった。
エリスコに対する正式謝罪をすることが保釈の条件だったとオコリさんは話しているが、弁護士によれば、謝罪は強要だったことから保釈された後は謝罪していないという。
オコリさんはアブジャの裁判所に起訴され、12月7日に初公判が行われたが、本人は出廷しなかった。
警察と食品会社を反訴
オコリさん側は昨年10月、エリスコと警察を相手取り、5億ナイラの損害賠償を求める訴えをラゴスの裁判所に起こした。逮捕と勾留は、憲法で定められた個人の自由と移動の自由、さらには言論の自由に違反すると訴えている。次回弁論は4月18日に予定されている。
ラゴスにあるエリスコの施設前では抗議運動が巻き起こり、SNSでは抗議のボイコットを呼びかける声が広がっている。
エリスコ創業者は現地のテレビ局のドキュメンタリー番組の中で、オコリさんに対する訴訟を取り下げるつもりはないと断言。「私が40年かけて磨き上げたイメージを他人に汚されるくらいなら死んだ方がいい」と強調した。