香港政府、トランスジェンダー活動家に「男性」の身分証交付 7年の法廷闘争の末
香港(CNN) 香港のトランスジェンダー活動家、ヘンリー・ツェさん(33)が4月29日、7年に及んだ法廷闘争を経てようやく、性別欄に「男性」と明記された新しい身分証明証を手にした。
トランスジェンダーを象徴するピンクと水色のストライプのシャツを着たツェさんは、入境管理局前に集まった記者団に対し、「私が手にしたこのカードは、自分にとっても、ついに新しいIDを入手できるほかの人たちにとっても、大きな意味がある」とコメント。「不適合の身分証明書が引き起こすきまり悪さや日々の問題がついに解消される」と喜びを語った。
ツェさんは英国と香港の2つのパスポートを持ち、長年、男性として生活してきた。英国のパスポートには男性と記載されているが、香港政府はこれまで市の身分証の性別変更を認めていなかった。
身分証は確定申告や銀行口座開設からテニスコートや病院の予約に至るまで、あらゆる場面で必須とされる。
香港当局は長年の間、性別変更の条件として性別適合手術の完了を義務付けており、申請者は性器の切除または再建手術を受けなければならなかった。
これに対してトランスジェンダーの権利団体は、手術は個人の選択であり、転換の一部でしかないと訴えてきた。トランスジェンダーの人が全て手術を選択するわけではなく、その余裕がなかったり、手術のリスクに耐えられる健康状態ではない場合もある。
そこでツェさんは2017年、香港政府を相手取って法的措置を起こした。
香港終審法院は昨年2月、ツェさんの訴えを認める判決を言い渡した。しかし当局が判決に従って政策を変更するまでには1年以上を要した。
香港政府が発表した新しい法的枠組みの下でも、女性から男性に性別を変更するためにはトップ手術(乳房の切除)を受ける必要がある。男性から女性に変更する場合は依然として性別適合手術を受けなければならない。
香港の入境管理局は、政策を決定するにあたって判決を慎重に検討しなければならなかったと説明し、法的・医学的に複雑な見解も含まれていたと指摘する。
香港終審法院の判決以来、入境管理局に寄せられた性別変更の申請は108件に上るという。このうちおよそ3分の1は承認済みで、残りは処理中としている。
判決が出た後、香港政府の対応を待つ間もツェさんの日常は困難続きだったという。
航空機に搭乗した際は航空会社の係員に性別を問題にされてあやうく乗り遅れかけ、本土に到着すると中国の入管当局に拘束された。
3月下旬には、香港政府が対応を不当に遅らせていると主張して別の訴えを起こした。政府が新しい政策を発表したのはその2週間後だった。