バングラデシュで「Z世代の革命」、ベテラン指導者を追放 これまでの経緯は
(CNN) 南アジアのバングラデシュで、主に若者からなるデモ隊が、10年以上にわたって国を支配し、近年はますます権威主義的になっていた76歳の指導者に対して抗議運動を展開した。こうした抗議活動は国内では「Z世代の革命」と呼ばれた。
首都ダッカでは6日、市内で人々が喜びを爆発させた。これより前、ハシナ首相が辞意を表明し、ヘリコプターで国外へと退避した。死者も出た反政府デモが数週間にわたって続いた末の出来事だった。
ハシナ氏の突然の国外への脱出により、15年にわたった政権に終止符が打たれた。専門家や人権団体は、ハシナ政権について、市民の自由を抑圧し、反対派を弾圧するため治安部隊を高圧的に利用したと指摘する。
バングラデシュ大統領府は6日、CNNの取材に対し、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が暫定政権を率いると明らかにした。
野党の主要政党は学生のデモ参加者に全面的な支援を申し出ている。
地元メディアなどによれば、抗議活動は当初、公務員の採用枠に対する学生たちの平和的な抗議デモとして始まった。だが、デモが政府による弾圧を受けて約300人の死者が出たことから、ハシナ政権の打倒を目指す全国的な運動へと変わった。
ハシナ氏はこうした暴力について野党を非難し、全国規模でのインターネットの遮断と無期限の外出禁止令を発令した。
こうした対応は火に油を注ぐこととなり、最終的にハシナ氏は家族とともにインドへと逃亡した。その後、首相官邸にはデモ隊が突入。壁は破壊され、家財は略奪された。
なぜ抗議デモが始まったのか
学生は7月1日、ダッカ大学で、政府の採用枠に関する抗議を開始した。これは、1971年の独立戦争に従事した兵士の家族に対して公務員の採用枠の30%を割り当てるというものだった。
ハシナ氏も含めて現在の政界の支配層はこの世代に関係している。
こうした採用枠は雇用の安定と高賃金とつながっている。デモ参加者は採用枠は差別的であり、ハシナ氏が率いる与党アワミ連盟の支持者を優遇するものだと主張した。
怒りを呼び起こしたのは国内の失業率で、特に若年層の失業率は高い。バングラデシュはハシナ政権の下で力強い経済成長を遂げたものの、新型コロナウイルスの流行後は経済成長が鈍化し、高いインフレや外貨準備高の減少に悩まされていた。バングラデシュの人口は1億7000万人だが、3000万人以上が無職か教育を受けていない状況にある。
抗議運動は7月15日に激化し、政府の暴力的な対応がさらに怒りをあおった。最高裁が採用枠の大幅な縮小を決め、インターネット封鎖を解除したあとでさえそうだった。
今月4日、警察とデモ隊との衝突により、少なくとも91人が死亡したほか数百人が負傷した。バングラデシュの最近の歴史の中で1日あたりの死傷者数としては最悪の水準となった。
ハシナ氏の辞任の後、お祝いムードはすぐに暴力的なものへと変化した。ハシナ氏の父親であるムジブル・ラーマン氏の生家を改装した博物館やアワミ連盟の事務所などに火がつけられた。