ドイツ、アフガン人28人を本国送還 新たな治安対策発表の翌日
ベルリン(CNN) アフガニスタン国籍の28人を本国へ送還する航空機が30日朝、ドイツから飛び立った。ドイツ政府は前日、亡命申請の規制を強化すると約束。先ごろ刃物を使った襲撃事件で死者が出たことを受けての措置だった。
ザクセン州内務省の報道官はCNNの取材に答え、アフガン人らを乗せた機体が現地時間の30日午前7時前にライプツィヒを出発し、同日午後にアフガニスタン首都カブールに到着する予定だと説明した。搭乗しているアフガン人らはドイツ国内の複数の州で有罪判決を受けた犯罪者。内務省によって選ばれ、本国へ送還されるという。
3年前の2021年8月にイスラム主義組織「タリバン」がアフガニスタンで実権を掌握して以降、ドイツがアフガン人の本国送還を行うのは初めて。独誌シュピーゲルによると、今回の送還は数カ月に及ぶ交渉、計画の結果実現したという。
送還されるアフガン人は全員男性で、1人当たり1000ユーロを受け取ったとシュピーゲルは報じた。ザクセン州内務省の報道官はこの点を確認していない。
機体の離陸後の記者会見で、独政府報道官は政府が直接タリバン政権と協議したわけではないと強調。重要な地域勢力による調停を通じて確実に送還を実施したと述べた。
その上で、独政府は重大な罪を犯した移民をアフガニスタンとシリアに送還する「取り組みの強化」に踏み切ったと明言。きっかけは5月に南西部のマンハイムで発生した刃物による襲撃事件だとした。
この事件では警官1人が死亡、複数の負傷者が出た。ドイツ当局は主な容疑者をアフガニスタンからの25歳の難民と特定。イスラム過激主義が動機だったとみている。
先週も西部ゾーリンゲンで刃物を使った襲撃があり3人が死亡、数人が負傷した。政府はこれを受け、新たな治安対策のパッケージを公表した。事件の容疑者は26歳のシリア人の男で、過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)と関係があったとされている。過去には送還の対象ともされていた。
ゾーリンゲンでの襲撃は、ドイツ国内で移民を巡る議論を再燃させた。ショルツ首相率いる連立与党には移民問題への対処についての批判が噴出。一方、移民反対を掲げる極右政党にとっては、今週末行われる複数の州の選挙に向けて追い風が吹く形となっている。