溶融金属降らせるウクライナ軍の「ドラゴンドローン」、ロシアが恐れる戦場の新機軸

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ウクライナ北東部ハルキウ州のロシア軍の陣地に火炎を降らせて飛行するドローン/Khorne Group/Telegram

ウクライナ北東部ハルキウ州のロシア軍の陣地に火炎を降らせて飛行するドローン/Khorne Group/Telegram

(CNN) ウクライナ軍は火炎を噴出しながら飛ぶ「ドラゴンドローン(無人機)」を配備し、領土侵攻するロシアとの戦争に臨むようだ。このドローンは、かつて両世界大戦で使用され恐るべき威力を発揮した兵器に現代風の仕掛けを施したものだ。

SNSテレグラムを含むソーシャルメディアにウクライナ国防省が4日投稿した一連の動画には、大量の火炎を投下しながら低空飛行する複数のドローンが映っている。火炎は実際のところ溶融金属で、ロシア軍が森林地帯に構えた陣地に降り注いでいる。

火炎の正体はテルミットと呼ばれるアルミニウム粉と酸化鉄の混合物。最大2200度で燃焼し、地上の木々を即座に焼き払う。ロシア軍の兵士を直接殺傷、無力化することはないとしても、ドローン攻撃によって彼らは身を隠す場所を失う。

ドローンから放たれるテルミットが神話に登場するドラゴンの口から吐き出される炎に似ているため、「ドラゴンドローン」の愛称が付いた。

ウクライナ軍の第60機械化旅団は、ソーシャルメディアへの投稿で「敵にとって本当の脅威になる。これほどの精度で敵の陣地を燃やせる兵器は他にない」と強調した。

英国の元陸軍将校で現在は地上戦専門の防衛産業アナリストを務めるニコラス・ドラモンド氏は、テルミットを投下するウクライナのドローン攻撃について、主な効果は敵に恐怖を植え付けることにあると指摘する。

同氏はCNNの取材に答え「ドローンを使ってテルミットを運ぶのはかなり革新的だ。しかしその効果は物理的というよりも心理的なものになるだろう」「私なら攻撃を受ける側に回りたいとは思わない」と述べた。

テルミットは1890年代にドイツの化学者が発見し、当初は線路の溶接に使われた。

しかしすぐに軍事転用され、第1次大戦中にドイツは飛行船からこれを爆弾として英国に投下したと、カナダ・モントリオールにあるマギル大学の歴史資料は記している。

第2次大戦ではドイツと連合国の双方がテルミットを空爆に使用した。爆弾としてだけでなく、鹵獲(ろかく)した敵の大砲を使用不能にする際にも用いられた。

ハルキウ付近のロシア軍の陣地に溶融金属テルミットとみられる焼夷兵器を投下するウクライナのドローン/Khorne Group via Telegram
ハルキウ付近のロシア軍の陣地に溶融金属テルミットとみられる焼夷兵器を投下するウクライナのドローン/Khorne Group via Telegram

テルミットは焼夷弾(しょういだん)の一種で、同様の兵器にはナパーム弾や白リン弾などが含まれる。

国連軍縮部によると、焼夷弾は大量破壊と環境への悪影響をもたらす可能性がある。

米国は第2次大戦中、悪名高い東京大空襲でナパーム弾を使用し、東京の大半を焼け野原にした。ベトナム戦争でもこれを広範囲にわたって使用している。

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