「憎悪教育」に批判も 深圳の日本人男児殺害、ナショナリズム巡る内省広がる
歴史に根差した怒り
日本には長年、中国の国家主義的な怒りの矛先が向けられてきた。この怒りは第2次世界大戦中の過酷な侵攻や占領に根差している。何世代もの中国人が、教科書や国営テレビで日本兵の残虐行為を学んで育った。
こうした憤りの感情をさらに高めているのが、東シナ海での領土紛争や地政学的な緊張だ。中国政府は、日米同盟の深化には自国の台頭を封じ込める狙いがあるとみて、怒りを募らせている。
習近平(シーチンピン)国家主席の下、中国は愛国教育を強化してきた。習氏は国際舞台で中国の力を主張するという自らの国家主義的政策に国民の支持を取り付けるため、帝国列強に辛酸をなめさせられた「屈辱の100年」をしばしば引き合いに出す。
日本人男児の刺殺は、中国北東部への日本の侵略を巡る追悼行事と同じ日に発生した。感情が高まるこの日、中国では各地でサイレンや黙とうによる追悼が行われる。
こうした敏感なタイミングもあり、今回の襲撃を憎悪に駆られた犯行とみる臆測に拍車がかかっている。
日本在住の中国人数十人は先週、異例の声明を発表して襲撃を非難し、「根本的な原因」についての省察を求めた。
声明には「中国では長年、国家主義的な過激な反日憎悪教育がまん延してきた。これにより、一部の中国人の日本への理解が妨げられ、無知と悪を許容する結果にさえなっている」と記されている。
知識人や専門職に就く人、ビジネスマン、学生が実名で署名した声明は、中国政府の政策を強く批判するとともに、「憂慮すべき状況」に変化をもたらすことを誓った。
一方、中国政府はこうした批判を否定している。
中国外務省の林剣報道官は23日、「中国にいわゆる反日憎悪教育は存在しない」と述べ、「私たちは歴史から学ぶことを提唱している。憎しみを永続化するためではなく、戦争の悲劇を二度と繰り返さないためだ」との認識を示した。