トランプ氏が示した貿易戦争の「融和策」、中国国内では嘲笑と不信感
ここ数カ月、中国政府は強気の姿勢を示してきた。先週には、習近平(シーチンピン)国家主席が東南アジア3カ国を歴訪し、安定した政治経済のパートナーとしての中国の地位の強化を試みた。ただ中国経済に一時の勢いはなく、一部の専門家の間では、中国政府は最終的に交渉を余儀なくされるとの見方もある。
トランプ氏の対中姿勢が突然変化したのは、ウォルマートとターゲット、ホームデポ、ロウズという米小売り大手4社の最高経営責任者(CEO)と非公開で会談した翌日のことだった。CEOらは会談で、関税政策による経済的影響の拡大や、これが金融市場へもたらす不確実性に懸念を表明した。
大手投資銀行の多くは、巨額の関税と中国による125%の対米報復関税の影響で、米国と世界の経済は景気後退(リセッション)に陥ると予測している。
トランプ氏は関税の大幅引き下げに関して具体的な数字を示していないが、ホワイトハウス高官はこれとは別に米紙ウォールストリート・ジャーナルの取材に応じ、現行の145%の対中関税が「およそ50%〜65%」に下がる可能性があると明かした。
ただ、米国の専門家と話をする目的でワシントンを訪問中の王氏は、この程度の関税引き下げでは中国を交渉の席に着かせるには不十分だと指摘する。
「本気で中国と交渉したいなら、根拠のない関税をすべて撤廃してからテーブルに戻るべきだ」と王氏は述べ、トランプ氏が北京を交渉に「おびき寄せよう」としていると付け加えた。
「いまトランプ氏に電話して弱みを見せれば、彼は戦術が奏功したとみてますます強硬になるだろう」(王氏)
呉氏は、貿易交渉は「あくまで中国の条件で」行う必要があるとの見方を示す。
「中国の視点から私はこう言いたい。貿易戦争を始めたのは米国だが、交渉するかどうかは中国次第だ。交渉の時期も議題も中国が決める」(呉氏)
トランプ政権が関税引き下げを検討中だとの報道は中国のSNSで嘲笑の的となり、愛国ムードの高まりの中でトランプ氏を揶揄する投稿が相次いだ。
ウェイボー(微博)では23日、「トランプは怖じ気づいた」がトップトレンドに浮上し、閲覧数は1億5000万回を超えた。対中関税を50〜65%に引き下げる案についての関連ハッシュタグも24日に広く見られた。
「我々の側は気にかけない姿勢を示している!」と投稿したユーザーのコメントには1000を超える「いいね」が付いた。別のユーザーは「『相互関税』の撤廃すら行わないなら、彼らとわざわざ交渉などしなくていい!」と書き込んでいる。