ANALYSIS

極右「アゾフ大隊」、ウクライナの抵抗で存在感 ネオナチの過去がロシアの攻撃材料に

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2019年、親ロシア派からのマリウポリ解放5周年の式典で行進するアゾフ大隊の兵士/Evgeniya Maksymova/AFP via Getty Images

2019年、親ロシア派からのマリウポリ解放5周年の式典で行進するアゾフ大隊の兵士/Evgeniya Maksymova/AFP via Getty Images

(CNN) ロシアのプーチン大統領は今回のウクライナ侵攻を「ネオナチ」の手からロシア語話者を守る「特別作戦」と位置づけた。

プーチン氏は2月24日の侵攻開始直前に行った演説で、ウクライナの「非軍事化と非ナチス化を目指す」と表明。これはウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人であることを無視した発言だった。

ロシア大統領府にとって特別作戦の「最重要証拠」となるのが極右の「アゾフ運動」だ。同運動はここ10年近くウクライナの軍事、政治情勢の一部になっている。

2016年10月14日、「ウクライナ防衛者の日」の祝賀行事としてトーチを掲げ行進するアゾフ大隊の隊員と元兵士/Genya Savilov/AFP/Getty Images
2016年10月14日、「ウクライナ防衛者の日」の祝賀行事としてトーチを掲げ行進するアゾフ大隊の隊員と元兵士/Genya Savilov/AFP/Getty Images

アゾフの軍事部門と政治部門は2016年、極右「国民軍団党」の設立に伴い正式に分離した。この時には既にアゾフ大隊はウクライナ国家親衛隊に統合されていた。

効果的な戦闘部隊として現在の紛争に深く関与するアゾフ大隊だが、ネオナチ的な傾向を有していた過去があり、その傾向はウクライナ軍への統合後も完全には消えていない。

自律的な民兵集団としての最盛期には、白人至上主義やネオナチの思想および記章との結びつきが指摘されたこともある。14、15両年にマリウポリやその周辺で特に活発な活動を展開し、現地のCNN取材班は当時、アゾフがネオナチのエンブレムなどを採用していると報じていた。

ウクライナ国家親衛隊への統合後、米連邦議会でアゾフ運動を外国テロ組織に指定する案が審議された際には、ウクライナのアバコフ内相(当時)が同部隊を擁護。19年のオンライン新聞ウクライナ・プラウダの取材に「(アゾフ構成員の間で)ナチス思想が広がっているとする恥ずべき情報工作は、アゾフ部隊とウクライナ国家親衛隊の信用をおとしめる意図的な企てだ」と語った。

アゾフ大隊はいまも比較的自律的な組織として活動しており、最近はマリウポリ防衛で存在感を発揮した。

ウクライナ政府が「麻薬中毒者やネオナチ」によって運営されているとの虚偽の主張を展開するプーチン氏にとって、アゾフは格好の標的となる。ロシア政府はこの紛争における同隊の役割を誇張しており、人権侵害を批判することも多い。

先月7日には、ロシアの国連大使がアゾフはマリウポリの人道回廊を妨害していると非難。市民を「人間の盾」として利用していると主張した。この主張はロシアメディアで一貫して繰り返されている。

一方、アゾフのデニス・プロコペンコ少佐は同日、同部隊のツイッターアカウントで共有した動画で、「民間人の(移動の)ための安全な回廊をつくる試みは集合場所での敵(ロシア軍)の行動により失敗した」と指摘した。

民間人の避難先となり、建物の両側の地面に「子ども」と書かれていたマリウポリの劇場が爆撃された後には、ロシア国防省が「国家主義的なアゾフ大隊の戦闘員」による攻撃だと非難した。

ロシアの情報工作において、アゾフ運動は事実と偽情報の境界が消える格好の標的となる。

アゾフ大隊の元隊員が実施する民間人向けの軍事訓練に参加するキエフ市民=2022年2月6日/Maxym Marusenko/NurPhoto/AP
アゾフ大隊の元隊員が実施する民間人向けの軍事訓練に参加するキエフ市民=2022年2月6日/Maxym Marusenko/NurPhoto/AP

ウクライナ軍内に明らかにアゾフと分かる構成員が入り、効果的な働きをしていることは、ウクライナ政府や同国への武器供与を続ける欧米諸国に不愉快な問題を突きつけている。

CNNはウクライナ国防省にコメントを求めている。

比較的最近まで、アゾフの指導層は白人至上主義的な見解を公然と唱え、同様の考えを持つ欧米のグループや個人との関係を構築していた。

英紙ガーディアンによると、アゾフ運動の政治部門「国民軍団」の現指導者、アンドリー・ビレツキー氏は10年、自らの目標を「世界の白人人種を最後の聖戦に導くこと」と語ったとされる。

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