米国で広がる格差、経済的成功は住む場所が決める?
60年前には、地域経済の繁栄を左右したのは物的資本であり、当時最新鋭の製造機器を使えたフリントなどの労働者は、最高水準の生産性と賃金を享受できた。
しかし、経済活動の重心が、伝統的製造業からイノベーションや知識の集積に移行した結果、地域経済の発展を左右するものは人的資本へと変化した。
そして、優秀な労働者や革新的企業が特定の地域に集中し、その集中が地域の競争力を高め、それがさらに多くの労働者や企業が引き寄せるという流れが生じている。オースチンなどでは、1980年との比較で35パーセントポイント以上も大学卒の住民比率が上昇している一方で、フリントではその比率は低下している。
米国外でも、例えば、インドと中国では、先進国との経済格差が縮小した一方で、国内での格差は拡大している。物や情報がより速く世界中を飛び回るようになる中でも、世界経済の中では地域格差が拡大しているのだ。
テレビ会議や電子メールも、人々が創造的な分野で隣り合って仕事をする必要性を失わせてはいない。ハイテク産業の集積地に移ってくる多くの技術者は、世界中のどこにいてもアイデアや情報をやり取りできるソフトウエアの開発に励んでいるが、そのソフト開発のためには、才能を持った人々が1カ所に集まる必要があるのだ。