米中貿易戦争、欧州や日本を利する可能性 UNCTAD報告書
香港(CNN Business) 米中の貿易戦争は企業のグローバル展開に大きな打撃を与える一方で、もし対立が長引けば、欧州とメキシコ、日本、カナダの企業は輸出注文を大幅に増やすことができるかもしれない――。国連貿易開発会議(UNCTAD)がこのほどまとめた調査報告でそう指摘した。
報告書では、米中が互いに科している関税のために、「米中の二国間貿易は減少し、他国からの貿易に取って代わられるだろう」と予想。米国でも中国でも、関税は国内企業を助ける役にはほとんど立たないと述べ、たとえ他国の貿易に恩恵をもたらすことがあったとしても、世界的な悪影響を及ぼす恐れがあると指摘した。
昨年7月以来、新しい関税の対象になった米中の貿易額3000億ドル(約33兆円)のうち、2500億ドルは他国へ移る公算が大きいとUNCTADは推計する。
最も大きな恩恵を受けるのは、国際競争力を高めている欧州連合(EU)で、輸出額は約700億ドル増える見通し。メキシコ、日本、カナダも200億ドル以上増えると予想している。
「二国間関税は国際競争力を変化させ、直接的な影響を受けない国の企業に恩恵をもたらす」と報告書は指摘する。
一方で、貿易戦争のあおりで中国の景気は減速し、世界中の株式市場で株価の乱高下を招いた。
関税戦争がこのまま続けば、世界のサプライチェーンが混乱して「いまだ脆弱(ぜいじゃく)な世界経済」を一層悪化させ、商品相場や金融市場を混乱に陥れると報告書は警告。米中の対立に加わって独自の関税を科す国が増えれば、「貿易摩擦は通貨戦争に発展しかねない」と警鐘を鳴らしている。