被ばく予防のヨウ素剤、ロシア軍侵攻で需要が急騰した理由
ニューヨーク(CNN Business) ロシア軍がウクライナで攻勢を強める中、原子力発電所が攻撃されて放射性物質が放出したり、核爆弾が使用されたりすることへの不安が高まり、ヨウ化カリウム(ヨウ素剤)に対する需要が激増している。
米疾病対策センター(CDC)によると、もしそうした事態になった場合、大量の放射性ヨウ素が大気中に放出され、呼吸を通じて肺に入ったり、水や土壌、動植物が汚染されたりする恐れがある。
ヨウ化カリウム自体は無害で、人体が必要とする重要な化学物質だが、放射性ヨウ素は首の前部にあるホルモン分泌器官の甲状腺を傷つける可能性がある。
もしも放射線被ばくが起きた場合、甲状腺では通常のヨウ素と放射性ヨウ素の区別がつかず、両方を取り込んでしまう。大量の被ばくは甲状腺がんにつながることもある。
ヨウ素剤は、液体や錠剤を指示通りに服用すれば、甲状腺を飽和状態にさせ、放射性ヨウ素の吸収を防ぐことができる。
米国で販売が認められているヨウ素剤の大手メーカーは、ロシアの軍事侵攻に伴いここ数週間で在庫が激減した。
市場への供給は枯渇し、価格は急騰している。
イーベイに14日出品されたヨウ素剤「サイロセーフ」は4箱で132.50ドル(約1万5700円)だった。IOSAT錠130ミリグラムは1箱89.95ドルで売り出されている。14個入りのIOSAT錠は、製造メーカーの米アンベックスのウェブサイトに表示された値段で1箱13.99ドル。ただ、現在はIOSATの130ミリグラム錠も65ミリグラム錠も在庫切れと表示されている。
アンベックスによると、ヨウ素剤は2月中旬から注文が殺到するようになり、世界中の個人や再販業者、病院、自治体、政府機関などから最大で1500万錠の注文が入っているという。