米、ロシアをデフォルトの瀬戸際に追い込む
ニューヨーク(CNN Business) ロシアに債務不履行(デフォルト)の危機が差し迫っている。米銀行に保有する凍結されたドルを使っての債務支払いを米国が差し止めたためだ。
西側諸国はウクライナへの侵攻を理由にロシアの外貨準備の約半分、3150億ドル(約39兆円)に制裁を科した。米財務省はロシアが凍結された資産の一部を使って一定の投資家にドルで返済することを認めていたが、バイデン政権は今週、ロシアがその外貨準備にアクセスするのを阻止した。
このため、ロシアはルーブルで債務の支払いを余儀なくされるか、または全く支払わない可能性がある。格付け大手のフィッチ・レーティングスは先月、いずれの選択もデフォルトとなると指摘した。
ロシアのペスコフ報道官は6日、「外貨準備のかなりの額が海外で差し止められている。この状態が続き、送金が阻止された場合、ルーブルでの支払いが行われるだろう。これが不可能なら理論的にはもちろんデフォルトの状況となる」と語った。
ペスコフ報道官はデフォルトは「人為的」なものだと主張した。支払うためのドルは持っているが、それを利用できないだけだからだとして、「本当のデフォルトの根拠はない。全く違う」と述べた。
米国はウクライナの町ブチャで行われた残虐行為の映像を受けて、ロシアへの圧力を強めようとしている。ドルへのアクセスを遮断するという財務省の決定に加えて、バイデン政権は6日にロシアのプーチン大統領の成人した2人の娘、ラブロフ外相の妻と娘を含むロシアの個人や金融機関に対する新たな制裁を発表した。
米財務省は、債権者への影響を最小限に抑えるために、ロシアが外貨準備の一部を使用することを認めていた。米銀大手JPモルガンの推定では、ロシアは昨年末に約400億ドルの外貨建て債務を抱えており、その約半分は外国人投資家が保有していた。
しかし、ブチャの路上で死んでいる市民の映像を見て、西側諸国はロシアにさらなる制裁を科し、締め付けを一層強化することになった。
「これはプーチン氏がウクライナとの戦争を続けるために使っている資金を一層枯渇させ、ロシアの金融システムにさらなる不確実性と困難をもたらすだろう」と、米財務省の報道官は4日にCNNに語った。
ロシアは金利を引き上げ、輸出企業に外貨をルーブルに交換させ、そしてエネルギー輸入業者にルーブルでの支払いを要求するなどして、ルーブルの価値を人為的に高く保っていた。
その結果、ロシア経済は西側諸国の制裁から多少なりとも守られることになった。しかしロシアがドルから切り離されれば、ほぼ間違いなくデフォルトに陥るだろう。そうなれば、もしロシアが支払うことを選べば、より高い利払いを余儀なくされる可能性がある。
ロシアが最後にデフォルトに直面したのは1998年のコモディティー(商品)価格の暴落で金融危機に陥った時だ。直近の外貨建てデフォルトは、1918年に共産党指導者ウラジーミル・レーニンがロシア帝国発行の債券を破棄した際に発生した。
西側諸国の投資家は以前よりロシア資産を減らしているが、ロシア政府がデフォルトに陥れば、投資家の損失は膨らみ始めるかもしれない。国際決済銀行によると、世界の銀行はロシアの事業体に約1210億ドル貸している。
6日の利払いには30日間の猶予期間がある。しかし、格付け会社はロシアが支払う意思がないことを明らかにした場合、その期間が終了する前にロシアのデフォルトを宣言する可能性がある。