米マクドナルド、ロシアから完全撤退 旧ソ連「グラスノスチ」の象徴
ニューヨーク(CNN Business) 約30年前、モスクワ市内に1号店を出店したファストフードチェーン大手の米マクドナルドは、ロシアが世界に開かれた国となった「グラスノスチ(情報公開)」の象徴だった。だがロシア軍のウクライナ侵攻を受けて800店以上を臨時休業としていた同社が、このほどロシアからの完全撤退を発表した。
マクドナルドは「ウクライナの戦争が引き起こした人道的危機」や「予測不可能な経営環境」を理由に、ロシアでの事業継続が不可能になり、マクドナルドの価値観とも一致しなくなったと判断し、事業を売却することにしたと説明している。
マクドナルドは今年3月、ロシア国内で展開する店舗を一時的に閉鎖していた。
売却完了後の店舗では、マクドナルドの名称やロゴ、メニューの使用はできなくなる。従業員への給与は売却が完了するまでは継続される。
マクドナルドのクリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は、ロシアで採用した6万人以上の従業員を誇りに思うと述べ、今回の決断は「とてつもなく困難だった」と強調。「だが我々は国際社会に貢献し、我々の価値観を堅持しなければならない。我々の価値観を守る限り、もはやあの地でアーチを輝かせ続けることはできない」とした。
マクドナルドのロシア1号店は1990年1月31日、モスクワのプーシキン広場に開店。営業時間を延長しなければならないほど大勢の客でにぎわった。
それは当時のソ連の大統領だったミハイル・ゴルバチョフ氏が、ロシアを開かれた国にしようとする政策の象徴だったと専門家は指摘する。その約2年後にソ連は崩壊した。
マクドナルドの撤退は、ロシアの新たな孤立を表していると別の専門家は指摘した。