批判を受ける「持続可能な」投資、グリーンウォッシュの疑いで捜査も
ロンドン(CNN Business) 近年、投資家はサステイナビリティー(持続可能性)の支援や自分の価値観に沿った形での投資活動に熱心になってきている。理論的には、こうしたトレンドによって資本主義を気候変動対策や社会悪との闘いに役立てるために利用できる可能性がある。
だが実際のところ、環境や社会、ガバナンス(企業統治)――いわゆるESG――の問題を重視した投資の急増は、こうした目標の達成に役立っているのだろうか。逆に多くの場合、銀行や投資会社が従来からある商品の見栄えを良くするために、パッケージし直して「グリーン」のラベルを貼るという巧妙な策略に乗せられているのではないだろうか。
投資業界は今、規制当局の取り締まりをきっかけに、こうした問いと向き合うことを余儀なくされている。ウォール街のESG投資熱の今後には不安が広がっている。
ドイツの検察局は先月末、資産運用会社DWSと同社株式の過半数を所有するドイツ銀行本社を「グリーンウォッシング」の疑いで捜査した。DWSが環境に関する認定を誇張し、投資家を欺いたという内部告発があり、同社は大西洋の両側で調査対象となっている。
ドイツ銀行は「検察が取った措置はDWSに対するグリーンウォッシングの主張に関連する未確認の人物に向けられたものだ」「これに対しDWSは、すべての関係規制当局及び機関に継続的かつ全面的に協力しており、今後もそうすると述べている」との声明を出した。
DWSのアソカ・ブアマン最高経営責任者(CEO)は今月1日に辞任を発表した。
強制捜査が行われるわずか1週間前には、米証券取引委員会(SEC)がBNYメロンの投資運用部門に対し、ESG関連のプロセスで「誤解を招く表示と省略」があったとして制裁金を科した。
SECによれば、BNYメロンは2018年7月から21年9月にかけて、一部の投資が「ESGの質の評価を受けた」と「複数の声明で記載または暗示していた」ものの、「実際は必ずしもそうではなかった」という。
BNYメロンは150万ドルの制裁金の支払いに応じたが、同委員会によれば、調査結果に対しては肯定も否定もしていない。
ESG投資に降りかかっているのは訴訟だけではない。米電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOも最近、ESG投資は「偽善的な社会正義の活動家が悪用する」「詐欺」だとツイートした。
同氏の批判の前には、テスラが「S&P500ESG指数」から除外された。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによれば、テスラのESG指数除外はフリーモント製造工場での人種差別や劣悪な労働環境の苦情を反映したものだという。
マスク氏はESG投資の専門家とは見なされていないし、同氏を批判する人物も多い。だが、このESG指数でエクソンモービルが重要な銘柄として含まれている状況に、人々は眉をひそめている。
投資運用会社は今後の展開について、気候危機の緊迫性を踏まえればESG投資を支える風潮が消え去ることはないとの見方を維持する。
「世の中は気候移行の世界に突入しつつある。我々はクライアントの資産をその正しい側の方に、正しいやり方で振り向けなくてはならない」。ウォール街を代表する銀行の資産運用幹部は先月、スイスの世界経済フォーラムでこう語った。
とはいえ、その幹部も認めているように、業界全体で一貫性を確立するためにはもっと良い基準があってもいいはずだ。現行のESG銘柄の分類は役に立たないこともしばしばだ。
「運用会社は、こうした分野で各自努力することが急務だ」とその幹部は述べた。