映画館はなぜポップコーンを売るようになったのか?
パンデミック後の姿
米投資会社ウェドブッシュでメディア・エンターテインメント業界を担当するアナリストのアリシア・リース氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を経て映画館が再開されてからは、人々はプレミアムチケットを購入するだけでなく売店での消費も増やしたと話す。さらにこの傾向は続いており、減少するどころか伸びているという。
これは、観客動員数がパンデミック前の水準に戻っていない現在、映画館にとって朗報だ。カナダのクイーンズ大学で組織経済学を専門とするリカード・ギル准教授は、映画館は基本的に飲食サービスと不動産の収入で成り立っているからだと指摘する。
一般的にチケット収入は映画館と映画会社で折半されるという。ギル氏は以前、映画館の売店がなぜ高額なのか調査した。
映画館はチケット収入の半分(それ以下であることも多い)だけでは、その他にかかるすべてのコストを回収することはできない。
様々な種類のメニューがある中、映画チェーンのアラモ・ドラフトハウス・シネマではポップコーンが最も売れ筋のフードアイテムとなっている/Cory Ryan/Courtesy Alamo Drafthouse
リース氏によると、米最大手の映画チェーンであるAMCシアターズとシネマーク・シアターズでは国内売上高全体の約3分の1を売店売り上げが占めている。この売り上げの利益率は80%以上に上るという。なぜなら売店の売り上げのほとんどが原価率の低いポップコーンだからだ。
2023年、AMCシアターズの飲食事業の総売り上げは16億7000万ドル(現在のレートで約2600億円)だった。同社の食品・飲料製品戦略を担当するネルス・ストーム副社長はインタビューで、ポップコーンはビジネスを支える「尊い力」であり続けていると語った。