OPEC、世界の原油価格の支配権失う可能性 IEA報告書
ロンドン(CNN) 国際エネルギー機関(IEA)は、石油の供給過剰が世界規模で迫る中、生産量を削減して価格を下支えする石油輸出国機構(OPEC)と協調行動を取るロシアなど他の主要産油国の戦略が機能不全に陥る可能性があるとの予測をこのほど示した。
石油の中期的な需給見通しの報告書で述べた。これら産油国のグループはOPECプラスとも呼ばれる。
IEAは、米国や南北アメリカ大陸の他の産油国が主導する増産で世界規模で石油の余剰生産能力が高まり、原油価格が下落した新型コロナウイルス禍の時期にただ一度みられた水準に近づく可能性に言及。
その上で、30年までには石油は供給過剰となり、その量は1日あたり800万バレルの高水準に達すると予想した。ビロルIEA事務局長は記者団に、この余剰分は極めて多いとし、過去最高級になるかもしれないと指摘した。結果的に、原油価格は「低水準の環境に入り込む可能性がある」とIEAはみている。
同機関はまた、世界規模での石油需要の伸び率は30年までの10年間でますます鈍化し、29年にピークを迎え、翌年には若干下落するとも予想した。
石油需要が後退する主因については、電気自動車(EV)の販売激増を含むクリーンエネルギーの利用の加速に触れた。
OPECプラスは過去約2年、石油供給の余剰分の相殺を狙って生産を削減し、石油依存型の加盟国などの経済に打撃を与える価格の低下を防いできた。生産量の縮小幅は世界規模の原油供給量の約5.7%に達するとされる。
今月には、大幅な減産を25年に入っても維持することで合意。同時に、今年10月1日からは減量の範囲を部分的かつ段階的に緩めることで意見が一致してもいた。
ただ、減産にもかかわらず価格はここ数カ月間、低落基調を続けている。米国による記録的な増産が世界規模での供給量を押し上げているのが一因。世界最大の原油輸入国である中国や他の先進国での需要がしぼんでいることも関係している。
重要な原油価格指標の一つである北海ブレント原油の値段は4月初旬には5カ月間での最高値を得ていたが、6月中旬には約9%安い1バレルあたり83ドルで取引された。同指標は4月初旬、イスラエル軍によるとされるシリアの首都ダマスカスにあるイラン領事館への空爆があった時期にもかかわらず1バレルが91ドルとなっていた。