ドイツ、中国との大型企業契約を阻止 安全保障の観点から
ロンドン/ベルリン(CNN) ドイツ政府がフォルクスワーゲン(VW)子会社の中国への売却に待ったをかけた。安全保障の観点からの措置だが、既に緊迫化している対中関係にとっての新たな打撃となる。
中国はドイツの最大の貿易相手国。
VW傘下のMANエナジー・ソリューションズは昨年6月、ガスタービン事業を中国国営のガスタービン企業に売却する計画を発表した。しかし同年9月に始まった政府の審査により、中国がガスタービンを軍艦の動力に利用する可能性があるとの懸念が浮上していた。ロイター通信が報じた。
売却差し止めの数週間前には、欧州連合(EU)が中国から輸入される電気自動車(EV)への関税を引き上げる意向を発表。中国政府はその数日後、EUの主要輸出品である豚肉のダンピング(不当廉売)に関する調査を開始した。
ドイツのハーベック経済相は3日の記者会見で、政府として外国企業からの投資は歓迎するとしながらも、「公共の安全」に関わる技術は保護の対象であり、「常に友好な関係を結んでいるとは限らない」国々から守る必要があると指摘した。
同じ会見で、フェーザー内相も「安全保障上の理由から」政府の決定を歓迎すると述べた。
ドイツ政府によるとドイツ・中国間の昨年の貿易額は2550億ユーロ(現在のレートで約44兆円)に上った。ただ両国政府の関係は近年緊張下にある。ドイツが自国の製造業保護に動き、対中依存の低減を図っていることが背景とみられる。
中国外務省の報道官は4日、「通常のビジネス提携」の「政治化」だとして今回のドイツの措置に反発。「ドイツが公正で差別のないビジネス環境を提供してくれるのを期待する。中国企業を含む世界中の企業に対して」と述べた。
MANエナジー・ソリューションズはドイツ政府の決定を尊重すると発表。CNNへの声明で、向こう数カ月の間にガスタービン部門の操業停止に向けた手続きを開始すると明らかにした。