経営破綻の米レッドロブスター、忘れられた歴史 黒人客から支持された理由は
レッドロブスターの開店は、公的施設での人種隔離の廃止を義務付けた公民権法の成立から4年後のことだったが、当時はまだ多くの学校や企業で人種隔離があった。
しかし、レッドロブスターは開店直後からレイクランドの黒人客に人気があったわけではなかった。また最近広まっている、ダーデン氏が公民権運動の先駆者であるという逸話も誇張されている。
企業情報によると、1938年にジョージア州ウェイクロスで開業したダーデン氏の最初のレストラン「グリーンフロッグ」は人種隔離がなかったとされる。また、かつてレッドロブスターの親会社だったダーデン・レストランツのウェブサイトにも、グリーンフロッグの創業者は「(人種を問わず)全ての客を歓迎した」と記されている。
しかし、ウェイクロスで育ち、グリーンフロッグを覚えている黒人の人々によると、グリーンフロッグは当初、黒人客を歓迎していなかったという。
ウェイクロス市の元市長であるジョン・フルーカー氏も、たしかにグリーンフロッグのキッチンには黒人の従業員もいたが、黒人客は歓迎していなかったと語る。
料理も決め手に
たしかにレッドロブスターの開業当初は、黒人客は常連ではなかったが、同社が南部や全国に店舗を拡大するにつれ、徐々に黒人の客層を拡大していった。
レッドロブスター黒人客を歓迎しているとの評判を確立した/Michael Nagle/Bloomberg/Getty Images
歴史家やレッドロブスターの元幹部によると、同社が黒人客に友好的で、黒人客を歓迎しているとの評判を確立できた主な要因として、新たな店舗を開店する際、黒人の従業員を雇用したこと、また後に黒人客を取り込むためのマーケティング戦略を策定したこと、などが挙げられるという。
またレッドロブスターが提供する料理も、黒人客の人気を博した主な要因の一つだ。
米ウェズリアン大学の社会学教授で人種を研究しているロビン・オートリー氏によると、黒人コミュニティーでは、ナマズやザリガニなどを屋外で揚げた魚のフライが人気の伝統料理だという。
その「屋外で食べる魚のフライ」を屋内に持ち込んだのがレッドロブスターだった、とオートリー氏は言う。多くの黒人にとって、レッドロブスターは、屋外で魚のフライを食べていた自分たちが、着席してメニューから料理を選ぶとその料理が運ばれてくる立場になったという社会的地位の向上の象徴となった。