バイデン氏、日本製鉄によるUSスチール買収を阻止
ニューヨーク(CNN) バイデン米大統領は3日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの143億ドル(約2兆2500億円)規模の買収を阻止する考えを表明した。政権最終盤を迎え、行政権限の重大な行使に踏み切った形だ。
バイデン氏は声明で「何度も述べているように、鉄鋼生産や生産に携わる鉄鋼労働者は我が国の屋台骨だ」とコメント。「国内で所有・運営される強力な鉄鋼産業は国家安全保障上の重要な優先事項であり、強じんなサプライチェーン(供給網)にとって不可欠となる」との認識を示した。
この動きについては米紙ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズが最初に報じた。意外性はないものの、米国企業に対する将来の外国投資に影響を及ぼす可能性がある。バイデン氏はかねて、1年前に発表された買収案への反対を表明。トランプ次期大統領も反対姿勢で、自身の就任後に買収を阻止する方針を明らかにしている。
買収案は2023年12月の発表後に政治問題化し、かつて米国の工業力の要となっていた会社が外国の手に渡ることに与野党から反対の声が上がった。買収阻止は国内では政治的に歓迎されても、他の米国企業への外国からの投資を萎縮させる可能性がある。USスチールが必要とする投資を奪う結果にもなりかねない。
対米外国投資委員会(CFIUS)は先月後半、USスチールの売却が国家安全保障上のリスクを及ぼすかどうか意見を一本化できなかったことをバイデン氏に通知し、国家安保上の理由から買収を阻止するか否かの判断を大統領に委ねていた。
全米鉄鋼労働組合(USW)は買収案の発表時から強く反対しており、労組組合員が勤務する一部の旧式製鉄所の雇用を守るという十分な保証が日本製鉄から得られていないと主張している。
ただ、バイデン氏の反対が最終決定にならない可能性もある。USスチールと日本製鉄は共同声明を出し、法廷で争う方針を明らかにした。
声明では「バイデン大統領の決定に失望している」と表明。「大統領の声明と命令は国家安全保障上の問題について信頼できる証拠を一切提示しておらず、政治的な決定だったことは明らかだ。我々の法的権利を守るために適切なあらゆる行動を取ること以外、選択肢は残されていない」としている。
一方、USWはバイデン氏の決定を称賛。声明で「組合員や国家安全保障にとって正しい措置であることに疑いの余地はない」と述べた。
USスチールと日本製鉄は協議を通じて、USスチールの国内鉄鋼事業に必要とされる投資をもたらすには買収が必須だと主張してきた。USスチールは、日本製鉄が買収案の一環で計画する27億ドル規模の投資を得られない場合、USWが代表する製鉄所を閉鎖せざるを得ない可能性があると主張。両社は3日の共同声明でも、この主張を繰り返した。
一方、USWは3日、日本製鉄の投資なしでもこうした製鉄所を黒字で運営し続けることは可能だと表明。「責任ある経営陣さえいれば、USスチールは長く将来にわたって良質な雇用や健康なコミュニティー、強力な国家・経済安全保障を支え続けることができると確信している」と述べた。