「棺おけ部屋」に120万人が暮らす香港 華やかな発展の陰で
香港(CNN) ぜいたくな高層マンションやしゃれたショッピングセンターが並ぶ香港の中心街。その陰に、棺おけと大差ないスペースでの暮らしを強いられる貧困層の現実がある。
マクさん(72)は、香港の中心部、湾仔(ワンチャイ)地区にあるビルの「棺おけ部屋」に10年前から住んでいる。部屋の床面積は約1.4平方メートルとベッド1台分で、その上に座れば頭上に天井が迫る。棚のように重なった20人分の部屋、換気の悪い通路、共同のトイレ兼シャワー室がひとつ。マクさんは「ここに住みたい人などいないが、生きるためには仕方がない」と話す。マクさんのような貧困層は、香港全体で120万人に上るとされる。
16年以上の経験がある香港のソーシャルワーカー、セ・ライ・サンさんは「こういう場所に暮らすのは怠惰な人たちと思われがちだが、決してそんなことはない」と強調する。「長時間の重労働でもほんの少ししか賃金がもらえなかったり、たまたま景気の悪い時に当たってしまったりすることもある」という。
マクさんも例外ではない。金融関連の事業で失敗を重ねた末、今は近くにあるショッピングセンターの清掃作業員として働いている。収入は、月額150米ドル(約1万1600円)ほどの家賃がようやく払える程度。借金取りに知られることを恐れて、フルネームを明かそうとしない。