「デザイナーベビー」に徐々に近づく生殖医療
早い段階で胚の性別を見分けることもできるようになった。男女をえり好みする親が中絶を行うのを防ぐ目的から、性判定は多くの国で禁止されている。ただ、米国では制限がないため、性判定の選択肢を提供している米国のクリニックは海外の患者の間で人気だ。
3人の「親」の遺伝物質を組み合わせることにより、失明やてんかんを引き起こすDNA変異を取り除く技術もある。米国では禁止されているが、2月に英国で認可が下りた。異常のある卵子のミトコンドリアに代わり、健康なドナーのミトコンドリアを移植するもので、米国でも似たような技術が試行されている。ただ、米食品医薬品局(FDA)は、長期的な影響をめぐり疑念が生じたのを受け、これをいったん中止にした。
この技術に関しては、子どもの健康面にとどまらず、目や髪の色、知能などを選別する遺伝子改変技術につながりかねないとして、懸念を示す倫理学者もいる。デザイナーベビーについての著書がある米ダートマス大学のロナルド・グリーン教授は、この技術が今世紀の終わりまでには確実に手が届くようになるだろうとの見通しを示す。
世論調査によれば、米国人の大半は、遺伝性疾患の除去からさらに踏み込んだ技術に警戒感を持っている。だがグリーン氏は、技術のおかげで子どもが有利になるようであれば、こうした姿勢が変化する可能性もあると指摘。「iPhone(アイフォーン)が欲しくなるなんて最初は誰も思いつかなかった。だが、スティーブ・ジョブズがiPhoneを生み出すと、みなが持つようになった」と述べる。
グリーン氏が例として挙げるのは、親が高身長の男の子を欲しがる可能性だ。研究によると、背の低い子どもは収入が低くなり、いじめられやすい傾向があるほか、リーダーを任される可能性も減るという。「親が『背の高い子どもを作ろう』と話すのが予想できる」と話す。