普段は単独行動、ザトウクジラが異例の集団形成 南ア沖
(CNN) 南アフリカ沖の海上で、ザトウクジラが大量に集まって群れを形成する異例の現象が観測されている。南アフリカ環境局の専門家がこのほど、米科学誌「プロスワン」(電子版)に発表した。
密集地帯はザトウクジラが例年の夏を過ごす南極圏の海からは遠く離れている。群れは20頭から200頭に膨れ上がり、集団で餌を取っているという。
研究チームはクジラたちが肺呼吸をして何度も潜り、盛んに潮を吹く様子を観察した。こうした行動は2011年と14年、15年、南アフリカの初夏に当たる10月~11月にかけても観測されていた。
しかしザトウクジラは普通は群れを作らずに単独でいることが多く、つがいや少数の群れができても長くとどまることはない。研究者のケン・フィンドレイ氏は「1980年代からザトウクジラを研究しているが、こんな現象はこれまで見たことがなかった」と語る。
群れの構成は流動的で、新しいクジラが加わったり離れたりしているといい、遠方から来て群れに加わるクジラもいる。フィンドレイ氏は「今回のような行動パターンの理由は憶測の域を出ない」としながらも、この海域の豊富な獲物を求めてクジラが集まってきた可能性があると推測した。ただ、大量のクジラを引き寄せた獲物が何なのかは分かっていない。
それでもフィンドレイ氏は、「20世紀の極度な捕鯨圧力から回復する力がこの生物にあることの表れ」だと述べ、前世紀は20万頭を超すザトウクジラが南半球で捕獲されたと指摘。「それから30~40年たって、これだけの頭数の回復が見られるのは素晴らしい。この状況は希望が持てる」と話している。