貯水池から古代の宮殿が出現、干ばつで水位下がる イラク北部
(CNN) イラク北部のクルド人自治区でこのほど、3400年前のものとみられる宮殿の遺跡が見つかった。現地を襲った干ばつの影響で貯水池の水位が下がり、これまで水の下にあった宮殿が姿を現した。
現場はチグリス川の川岸に位置するモスルダムの貯水池。研究者らは報道向けの発表の中で、今回の発見を機に考古学上の調査が進めば同地に存在したミタンニ王国への理解が深まるとの期待を語った。ミタンニ王国は、古代の中近東にあって最も研究が進んでいない王国の1つ。
当時、宮殿は川からわずか20メートル程度の地点で形成された段丘の上に建てられていた。段丘部分には泥れんがによる補強が加えられた。
宮殿の壁も泥れんがを積み上げて作られ、独テュービンゲン大学古代中近東研究所の考古学者、イバナ・プリーツ氏によれば最大で2メートルの厚さがあったという。
ミタンニ王国は、古代の中近東にあって最も研究が進んでいない王国の1つ/University of Tübingen eScience Cente/Kurdistan Archaeology Organization
いくつかの壁は高さ2メートルを超え、部屋によってはしっくいが塗られていた。研究チームは青や赤に彩色された壁画も発見。当時の建造物で壁画が残存しているケースはまれで、「考古学上のセンセーション」との見方を示している。
現場からはこの他、楔(くさび)形文字を記した粘土板10枚も見つかった。これらの文字を捉えた高画質の画像はすでにドイツへ送られ、今後解読が進められる。
プリーツ氏はCNNの取材に対し「解読を通じて、ミタンニ王国の内部構造に関する情報を引き出したい。経済を成り立たせていた組織の実像や、王国の首都と周辺地域における行政の中心地とがいかなる関係を築いていたのかを明らかにできればいい」と語った。
粘土板の文字を捉えた高画質の画像はすでにドイツへ送られた/University of Tübingen eScience Cente/Kurdistan Archaeology Organization
貯水池の下にある宮殿は、水位の低下によって2010年にその存在が確認されていたが、実際に発掘が可能になったのは今回が初めて。
ただ発掘後まもなく、遺跡は再び水の中に沈んでしまった。プリーツ氏によると「また姿を見せるのがいつになるのかはわからない」という。