超新星残骸で「チタンの泡」発見、恒星爆発の謎解明につながる可能性
(CNN) 地球から約1万1000光年離れた距離にある超新星残骸「カシオペア座A」で、チタンの「泡」が発見されたとの研究結果が、科学誌「ネイチャー」に28日発表された。
一部の巨大恒星が爆発に至る要因の理解につながる可能性もあるという。
カシオペア座Aの観測は2000~18年、米航空宇宙局(NASA)のX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」を使って実施。研究チームが最近このデータを調査した。
カシオペア座Aは、膨張する高温ガスからなる巨大な「泡」を指す。天の川銀河で確認されている超新星爆発の残骸としては最も新しく、340年前に爆発が起きた。この超新星の光は1670年代に初めて地球に到達した。
カシオペア座Aは天文学的にいって比較的近い位置にあり、宇宙の成り立ちに関する知見をもたらすことから、研究者が以前から調査を進めてきた。恒星は爆発すると、宇宙空間に元素を放出する。チャンドラのような望遠鏡を使うことで、カシオペアAが爆発時にどの元素を放出したのか解明につながる可能性がある。
太陽の10倍以上の質量を持つ恒星はエネルギーが尽きると爆発するが、その理由は研究者も正確には把握していない。こうした爆発の結果、金やチタンのような重元素が宇宙空間の至るところに放出され、地球でも見つかっている。
論文の筆頭著者を務めた立教大物理学科の佐藤寿紀助教は声明で、「研究者の見方では、電子機器や宝飾品など日常生活で使われるチタンの大半は、巨大恒星の爆発によって生み出された」「だが、研究者はこれまで、安定したチタンが作られる直後の瞬間を捉えることはできていなかった」と指摘した。
巨大恒星は中核部での反応によって発生する力をエネルギー源とする。こうしたエネルギーが尽きると、恒星の中心は崩壊し、ブラックホールや中性子星と呼ばれる高密度天体が形成される。
研究者がこの現象のコンピューターモデルで分析したところ、この時のエネルギーはすぐに燃え尽きてしまい、衝撃波は失速することが判明した。これでは超新星爆発は起きない。
そこで新たなコンピューターシミュレーションを行った結果、ニュートリノと呼ばれる粒子が超新星爆発の継続を可能にしている可能性が示された。
ニュートリノは中性子星の形成時につくられる低質量の粒子で、衝撃波を外側に押しやり、超新星爆発を可能にする。
新研究によると、カシオペア座Aを生み出した超新星爆発はニュートリノが原動力になっていた可能性が高いという。