群れから離れたゾウ1頭捕獲、集団移動は生息地求める必死の旅か 中国
(CNN) 中国南西部・雲南省の保護区を離れて群れで移動を続けていたアジアゾウのうち1頭が、このほどようやく捕獲された。群れは昨年、保護区を離れ、畑や集落、大都市を抜けて500キロ以上も移動している。
捕獲されたのは6月6日に群れを離れて単独でさまよっていた1頭で、先週、無事に保護区へ戻された。このゾウは、地元当局が用意した餌を食べたり村落で餌をあさったりしながら190キロ以上も単独で移動していた。
雲南省によると、このゾウは体重1.8トンのオスで、人口密集地の近くに出没して人の安全を脅かす恐れがあったことから、麻酔剤を打って捕獲することにした。獣医師が診察した結果、外傷はなく、保護区に戻すと森林の中を歩いて川で水浴びをしていたという。
一方、残りの群れは、ドローン数十機による24時間態勢の監視を受け、救急隊や警官らに見守られながら今も移動を続けている。
ドローンで撮影された映像はインターネットでライブ中継されて数百万人が視聴。ゾウたちが作物を踏み荒らしたり、キッチンに侵入したり、集団で寄り添って昼寝したりする様子にくぎ付けになっていた。
しかしやがて一般の関心が薄れると、1年におよぶゾウの移動に伴う環境問題が露呈し始めた。
ゾウの群れの移動は資源を求める必死の旅だったとの指摘もある。アジアゾウは中国で保護種に指定され、保護の取り組みが奏功して個体数は40年の間に約300頭に倍増した。しかし中国の研究チームが先週、科学誌ネイチャーに発表したレターによると、雲南省南部では過去20年の間にほぼ40%の生息地が商業開発によって失われた。
同地のゾウは、生息地が縮小して断片化・孤立化が進む中で、多くが農地で餌を探すことを強いられ、人との衝突も増えている。