中世の井戸の底から見つかった遺骨の謎、DNA分析で解明 英
DNA解析の結果から、井戸の中で見つかった幼い男の子については青い目と赤い髪をしていた公算が大きいことも分かった。赤毛は欧州のユダヤ人の特徴として歴史的に定型化していると、論文は指摘する。
論文は30日刊行のカレント・バイオロジー誌に掲載された。
中世の年代記作者、ラルフ・オブ・ディセトは当時の殺戮(さつりく)の様子を生々しく描写している。
「エルサレムへ急ぎ向かおうとする人々の多くは、まずユダヤ人に対して決起し、それからサラセン人の下に侵攻しようと決めた。そのため(1190年の)2月6日、ノリッジの自宅にいるところを見つかった全てのユダヤ人は虐殺された。前もって城に避難していた人たちもいた」
当該の井戸がある場所は、中世のノリッジでユダヤ人が居住していた地域と一致する。論文によればノリッジのユダヤ人コミュニティーの祖先は仏ノルマンディー地方のルーアン出身のアシュケナジムで、1066年にイングランドへ侵攻した征服王ウィリアムに招かれる形でやってきたという。
炭素年代測定法で割り出した遺骨の死亡年は、1161~1216年の間とみられている。イングランドにおける反ユダヤの暴力の記録が多い時期と重なるが、一方でイングランド王ヘンリー2世に対する大規模な反乱が起きた1174年もその間に含まれる。ノリッジではこの反乱でも多くの人々が殺害された。