フロリダ水族館の成功で、より大規模なサンゴ再生活動に新たな扉が開かれるだろうとミラー氏は語った。
「このサンゴ種は再生対象として重要な存在なので、人間のケアのもとで産卵が可能になれば介入手法を開発する研究チャンスも大いに広がる。こうした介入により、気候変動やその他の自然の脅威に対してもっと強靭(きょうじん)な再生の取り組みを実現できる可能性がある」とミラー氏はCNNに語った。
ラボで産卵したエルクホーンサンゴを種の再生に活用するには、さらに研究を重ねて十分な安全性と効果を確かめる必要があるとミラー氏は言う。
「こうした形での飼育下の産卵は、世界規模での広範囲のサンゴ再生に直接対処可能な、ニーズの大きさに対応できるツールではない。実際のところ、現状ではそのスケールに対処するサンゴの再生活動は存在しない。サンゴ礁の生息環境を、サンゴが繁茂できる生存条件に保つための行動を本気で起こさないかぎり、本当の意味での成功は望めないだろう」とミラー氏はCNNに語った。
気候危機こそが解決が必要な究極の問題だとミラー氏は言う。海水温の急激な上昇が、水質汚染と並んで対処が必要となる。それでも、ラボでエルクホーンサンゴを飼育できたことは、サンゴ再生活動の上で重要なツールになると同氏は言う。
「飼育下の産卵の取り組みから可能となったサンゴの繁殖と介入に関する研究で、時間を稼ぐことができる。サンゴが我々の礁から完全に消滅するまでに、こうした変化を効果ある形で実現するまでの時間だ」(ミラー氏)
時間稼ぎ
NOAAによれば、エルクホーンサンゴは枝が毎年5インチ(約13センチ)も成長する、サンゴの中でも最も成長の早い種だ。フロリダ水族館の研究者の観察によれば、新たに生まれた赤ちゃんサンゴは3~5年で生殖可能期に達するだろう。
研究者は今後1、2年のうちに、ラボで育てたサンゴをフロリダキーズの国立海洋保護区に移植するつもりだ。
サンゴ再生を急ぐ闘いで、今回の発見ははじまりに過ぎないと研究者も口をそろえる。
「我々はまさに時間稼ぎをしている」とオニール氏。「礁のために、サンゴのために時間を稼いでいる」
最終的な目標は、遺伝子の多様化を志向し、汚染や海水温度上昇、病気といった脅威に耐えうる強靱なサンゴ種を育てるという繁殖プログラムだ。
その後は自然が舵(かじ)を握る番となる。
「サンゴ礁には希望がある」とオニール氏は言う。「希望をあきらめてはいけない。それが全て失われたわけではない。だがこの地球を守るためには、自分たちの行いを真剣に変えていく必要がある」